日本財団 図書館


間の取り方ですとか、形ですとか、気合ですとか、そういうことがとても大事な世界にあります。邦楽、邦舞は、我々舞台人には以心伝心とか、気心がしれている、とかとても暖昧な所から始まっているような気がします。伝統という所からも入ってきています。ちょっと袖幕を閉めて、その"ちょっと"って、どのくらい?何センチなのか?ドン帳早めに、早めって?舞台にはそういった曖昧な所が多くあります。それを養った勘とかという物でやってきましたが、それでは伝わらないスタッフボランティアの人達や新人にはすこしづつ基準を造って行かなくてはダメだろう。

新しくオープンした劇場に足をはこんで、間口がたりないとか、奥行がない袖中が狭いとか使用する側からの文句をいうのだけれども、でもそれだったら、どこにどういう基準があるの?と劇場設計の方から言われると、今でも我々舞台人がこれがスタンダードというのを出していない。客席800とか1,000ならば基本的に間口この位が欲しいです、奥行このくらいとか、奥行がこの程度なら吊バトンは最低何本入れてほしい、など。これが、今考える舞台技術者のスタンダードですと、参考になる物を提示出来る様にすることをしたい、そう言ったスタンダードを我々の方にも設計の方でもせめて一つの劇場が出来る時にはみんなでいろいろな意見をだしてもらって、ということも必要になってくるのかと思います。今劇場でもいろいろな部分がデジタル化して来ていますが、問題点もある。アナログでやって来た技術者は方法論を切り替えなくてはならない。先般東京上野の文化会館がリニューアルオープンしたのですけれどもデジタル化して、はいいのですが、オープニングの舞踊公演で1幕と2幕の間のドン帳が上がらなくなってしまったらしいのです。ひと昔だったら、スノコに走れとか、ブレーカーが落ちたから確認して入れるとか、たいがいは自分達でなんとか出来た。今はメーカーを呼ばないとどうにもならない、北海道の地域ではすぐ来てくれない、2日、3日かかってしまう。アナログとデジタルの問題。

ちょっと話は変わりますが、アナログの話。この間北海道舞台塾でラジオドラマリーディングというのをやりました。ラジオドラマを舞台の上で再現してもらう、擬音という効果音を使って雨の音、米とあずきと砂、それぞれ違う雨になる、その他いろいろな音をいろいろな道具をさがし出し想像し創作した。こういう作り方をすると、客席の方も想像性をきちっと持っていないと面白くないわけで、参加できないですね。

ある地域のホールの話をします。こういう管理の仕方、使用する子供達との関わりの一例です。小学校の学芸会、文化祭を町のホールを使用してやっていまして、その時の照明、音響担当、技術の部分を担当している子供達に対しての大人の技術者の対応の仕方、大抵のホールは子供に対して自由に照明卓、音響調整卓はさわらせませんね。そこの調整室には子供だけで、夕焼けの照明を入れたり、音のテープ出しをしている。大人達はその子供達に操作の方法を指導し、まかせる。網元の方は別ですが、安全管理とかいろんな問題がありますが、基本は子供達にそのホールをどんどん使ってもらうということがその町の劇場文化ということの大きな種になる。劇場を広場として使ってもらう、自分達のホールだと思ってもらうという状況にもって行くことが必要だと思う。それに対して我々劇場側の人間というのは、市民、町民の想像力に応えられる、技術力、造形力という伝える力を持つことです。埼玉県では舞台芸術の専門高校が考えられているという。静岡でも文化芸術大学が開校する。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION