(2) 鉄道輸送
鉄道輸送における保税輸送の手続は自動車輸送と異なる。
国境を越える鉄道輸送の国際的枠組みとしてEU諸国はCIM条約を批准している。そのため、ハンブルグやロッテルダムからロシア向けに貨物輸送を行う場合、当該条約批准国間の鉄道輸送はCIMに基づくRail Waybillの使用が可能である。この点においては、国境を超える自動車輸送が、欧州における国際自動車輸送の枠組みであるCMR条約に基づくTruck Waybillによって行われるのとまったく同じである。
しかし、自動車輸送にはない特徴として、以下の2つがあげられる。
a. Rail Waybillが税関への申告書の役目も兼ねること
自動車輸送の場合は、保税輸送としての走行を可能とするためにはT-1やTIRカルネを必要とした。しかし、鉄道輸送の場合はRail Waybillが税関申請書の役割を兼ねるのが自動車輸送にない特徴となっている。
具体的にはRail Waybillを輸送前に税関に提出し、保税輸送許可印を受ける手続が必要である。
b. Waybillの切り替えが必要であること
東欧・EUにおける国際鉄道輸送はCIM条約によって可能であるが、CIS諸国は同条約を批准していない。そのため、CIS諸国への鉄道輸送にはCIM条約に基づくRail Waybillによる輸送は不可能であり、CIS諸国が批准するSMGSに基づくRail Waybill輸送がなされる必要がある。したがって、Waybillの切り替え手続が必要であるが、当該作業を行うフォワーダー事務所がCIS諸国と東欧の国境(ポーランドとベラルーシ国境に位置するブレスト等)に存在しており、遅滞なく行われている。