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密貿易でどんどん流れているように、インドはもっとパキスタンに輸出したいのです。インドも別に困ることではない。けれども今のところSAARC自体ASEANより断然弱い組織だということです。

司会 そろそろお時間の方も迫ってきているんですが、ご質問があればどうぞ。

D バロー教授のところの話ですが、経済の水準が低いけれども、民主主義の水準が高い国は、将来的に民主主義の水準が低下するという指摘なんですが、パキスタンの識字率で、とても民主主義が高いとは思えないので、この基準には当てはまらないような気がしたので、どうかなというのが一つ。

あと、さっきイスラマバードの高速道路の話があったんですが、それはパキスタンが自前でやったのでしょうか。もし、外国からの援助だということであれば、そんなものにお金を出す方もどうかしていると思うんですが、そういう部分をちょっとお話ししていただきたいと思います。

小田 全くご指摘のとおりです。民主主義の定義は彼の研究ではあいまいでして、確か民主主義というのは、有権者が自由に選挙に参加できるかどうかを基準にしています。基本的にパキスタンでは有権者は21歳以上です。21歳になれば投票所へ行って選挙できるということで、彼の指標ではパキスタンというのは非常に民主主義の高い国であるわけです。先ほどおっしゃったように、非常に識字率が低くて、一部の人間が広大な農地を所有していて、かつ新興ビジネスグループが力を持っているような国に、真の民主主義というのはあり得ません。どういったことが実際に行われているかというと、投票所へ行く前にすべて結果は分かっているような感じで、地主さんが今度は誰々に入れろと命令すると、そこで働いている人たちはみんなその候補者に入れてしまうのが現実です。ご指摘のようにパキスタンにとって、真の民主主義があったかどうかというのは、非常に疑問です。ここでロバート・バローが言っているのは、民主主義が非常に高い国で、かつ経済の状態がよくないというのは、混乱がおきる可能性が非常に高いということです。アフリカの国とかもそうだと思うのですが、独立後、いわゆる民主主義的な路線を歩むのですが、結局、民主主義であるがゆえにいろいろな政党や、民族による対立が起こって、そしてやがてはその軍事クーデターが起こって、独裁がまた始まってしまうという例のように、彼は現在の経済水準は低いが、民主主義の水準が高い国は、将来的に民主主義が低下する可能性があることを指摘しているのだと思います。

 

 

 

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