このように経済の不振が続くなかで核実験を行ってしまったわけで、パキスタン経済は危機的な状況に追い込まれてしまった。今年の1月からIMF、世銀による融資が再開され、パリ・クラブおよびロンドン・クラブとのリスク交渉も成立し、全体で55億ドルぐらいの融資パッケージがまとまりましたが、依然、厳しい状況が続いています。
資料3-1は、対外債務残高の数字です。対外債務残高をどのように計るかで、いろいろ数字は変わってくるのですが、大体今ですと、GDPの40から45%ぐらいいっているのではないかと言われております。資料3-2は、国内債務残高の数字です。これは大体GDPの40%を超える額がありますので、(対外、対内)両者あわせるとGDPの100%近い借金を抱えているということになります。
資料4はデット・サービス・レシオといわれるもので、債務返済能力を表した指標で、年間の返済額を年間輸出額で割った数字です。大体20%を恒常的に超えていて、今年に至っては、30%を超えるのではないかと言われています。IMF・世銀の指標では20〜25%を超えると、返済が危険な状況にあると言われていて、パキスタンは、そのような状況が長期にわたって続いており、経済が危機的な状況に向かっていたことが、これでわかるかと思います。
資料5は財政赤字対GDP比ですが、財政赤字は毎年減ってきています。これはIMFによる構造調整の成果でもありますが、先ほども申しましたように、これによって一番被害を受けているのが、社会セクター、開発のセクターでありまして、パキスタンの教育とか、健康を示す指標というのは、非常に貧しい状態から抜け出せないでいます。
資料6は、社会開発の指標を表したものです。パキスタンでの初等教育の入学率は、全体の62%です。つまり適例年齢の児童のうち、62%しか小学校に行っていないということになります。女子に至っては38%しか入っていない。それから成人の識字率は、たったの38%。これはスリランカの91%に比べれば話にならないという感じです。低所得国全体の数字が50%ですので、パキスタンの数字はかなり低く、これまで社会セクターの開発がいかに遅れていたかということがわかるかと思います。
IMFによる融資の再開に伴って、コンディショナリティーを受け入れなければならないのですが、東アジアの通貨危機でも言われたように、このコンデイショナリティーは非常に厳しいもので、かえって経済を悪化させるのではないかという意見もあります。今回のクーデターの背景には、IMFによるコンディショナリティーをめぐって国内のコンセンサスがとれなかったことも挙げられます。