先ほど申しましたように、IPPという問題がありまして、これはどんな問題かといいますと、前のブット政権のときに、電力の今後の需要を見越して、電力部門の民営化を図りました。これはパキスタンのみならず、アジアの各国でも盛んに行われているIPPという手法ですが、このブット政権のときにどのようなことが行われたかというと、IPP契約に際して、IPP業者からベナジール・ブットと夫であるザルガリが賄賂をとっていたと言われています。ナワズ政権になってから、ブット時代に汚職によって結ばれた契約は認めないと、一方的に契約を放棄するという動きが起こりました。現在もまだ、この問題は全面解決しておりませんが、IPPには、世銀、OECF、それから日本の商社、あと海外の企業も関わっており、このIPP問題を契機に、パキスタンは投資家の信頼を大きく欠くこととなり、海外からの投資はどんどん減少傾向にあります。
それから、主要輸出品である綿製品ですが、これがインド、中国の綿製品の市場への参入によって、うまいように成長しない。また綿花の生産が不振といった内部の問題も重なり合って、経済状況は非常に悪化しています。
資料2は、海外からの投資額の推移で、94年、95年をピークにして、年々減っています。去年は核実験やIPP問題の影響で、相当落ち込んで4億ドル程度しか外資が入ってこなかった。財政面では、間接税に頼るという財政体質が、高い関税を逃れようとする密貿易の温床にもなっており、地下経済が非常に大きくなっています。今では大体GDPの40%、50%ぐらいではないかと言われています。年間成長率は大体30%ぐらいと推定されます。極端に見積もりをする方は、GDPが100%を超えているという話もあります。密貿易とか、脱税とか、こういったアンダー・グラウンドの経済をいかに取り込んでいくのかというのが、今後のパキスタンの大きな課題の一つであると思います。
それから、政府の支出ですね。これも非常に硬直的でして、債務返済で50%ぐらい、軍備に関する支出が25%ぐらいを占めている。つまり75%が非生産的な部分に使われているということで、開発とか社会セクターに必要な資金というのは、大体国家予算の12、3%ぐらいしか残されていない。その残り少ない資金もIMFの構造調整により削減傾向にあります。