それから、ドイツのベルリンにトランスペアレンシー・インターナショナルという会社があるのですが、ここは発展途上国とか先進国の汚職状況に関するレポートを発表しています。96年の報告によれば、パキスタンは調査対象56ヶ国中2番目に汚職が広がっている国であるという調査結果でした。ちなみに1番はナイジェリアでした。インドもこのとき同じ調査に載っておりまして、インドは56カ国中11番目でした。
では、どんな腐敗や汚職が横行していたかなんですが、一例として、政治家や有力者による銀行ローンの未払い、これが日常化していたことが挙げられます。ナワズの関係企業が借金をため込んで返さないという例もあります。特に政府系銀行では、こういった不良債券が非常に多くて、総貸出の約30%ぐらいそうであったと言われています。規模にすると国家予算の3分の1、大体4,000億円ぐらいが未払いであったわけです。日本の不良債権に比べると規模の小さいものですが、パキスタンレベルからすると、非常に大きな問題であったということです。
それから、税金に関する汚職が横行しています。税務署の役人が、税金を徴収する際にわいろを受け取って、ちゃんとした査定をしないで帰っていってしまうということが多々あります。これには、まず、税務署の役人が税システムを理解していないということが挙げられます。ですから、払う方も税務署の役人が何も知らないということを知っていますので、ある程度の金をつかませて帰してしまうということが日常化しているのです。100人に一人の割合でしか税金を払っていないとか、課税対象の約40%しか申告をしていないとか、ナワズの家族企業も税金を払っていないことが発覚するとか、これはただ単に政治家だけではなく、全国的な規模でわいろというのが横行しているということです。
それから盗電や電気代滞納ということが日常茶飯事に行われています。電力の供給会社に、KESC、WAPDAというのがありますが、これらの電気供給会社は、組織の非効率性に加え、盗電、電気代滞納により毎年非常に大きな赤字を計上しています。WAPDAだけでも年間570億ルピー、大体1,000億を超えた赤字です。電気の徴収を徹底させようとしたKESCの責任者が暗殺される事件が発生したり、汚職がらみのいろいろな治安の悪化があり、最終的にはナワズは軍に電気代の徴収を依頼するわけですが、軍による電気代回収は成功を収めたようでした。電気代の大口滞納者には州政府が含まれているという、笑うに笑えない話があります。