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20世紀というのは、非常に簡単に言えば、パックスアメリカーナとかいろいろありますが、そうではなくて、社会的にみると、20世紀というのは3つの特徴があったと思います。

一つは、民主主義が一般大衆化したというか、すべての人が投票権を持てるんです。日本でも女性の方も戦後投票権を持てるようになった。民主主義が大衆化したということが一つ。

それから、物質文明が最高に達した。もうこれ以上いらないんじゃないかと、私は思っています。皆さんはそうじゃないと思ってるかもしれませんが、これ以上の物質的な豊かさとか、これ以上のスピード、これ以上の便利さ、全部いらないと僕は思っています。それが2番目の特徴です。

3つ目が、すべての植民地が独立する。これがやっぱり20世紀であるんです。その最後に残ったのが東ティモールです。まだ小さなところでちょっとありますけどね。でも、もうほとんどないんです。植民地が独立した。その世紀なんです。だから僕はよく、東ティモールが独立しなければ、20世紀は終わらないと言って、よく演説していたんですが、そういう問題だと思います。

どうしてこうなったかと言いますと、東ティモールというのは450年植民地なんです。自分の祖国を持ったことがない。あそこはポルトガルの植民地だったわけです。

場所から言いましょう。場所は分かりますよね。ジャワから、真珠の首飾りとよく言われる小スンダ列島というのがありまして、その一番東の端にティモール島があります。ちょうどニューギニアの南、オーストラリアの北というところ。ちょうど真ん中辺にあるんです。

そこは、初めポルトガルが植民地にしたんですが、途中でオランダが入ってきて、両方で分けて東はポルトガル領、西はオランダ領ということになったんです。それが16世紀です。それからずっとポルトガル領で、祖国を持たないままに来たわけです。1945年に第二次大戦が終わりますが、その間に日本も3年間侵略しています。

後で話しますけど、戦争中、僕が一番長くいたのは東ティモールなんですよね。僕は成績が悪くて戦争反対ですから、南へ南へだんだん流されました。満州の経理学校を卒業したんですけど、最後に一番遠いところまで引っ張っていかれて、東ティモールヘ。僕はそれでよかったと思います。ゴーギャンが南の島、タヒチに行ったかな。あれほど僕は文学的じゃないけど、東ティモールというのは、戦争から離れられるなという感じはしました。

 

 

 

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