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例えば、社会党のビルがあって、最初空爆するんですけれども、屋上のアンテナが残っていたのです。2回目に空爆したときにアンテナだけをピンポイントで倒すわけです。それくらい精密にNATOは空爆する力を持っています。

もちろん誤爆と呼ばれている、コラテラル・ダメージという、付随被害、巻き添えはあります。ベオグラード市内でも兵舎として使われていた小学校のすぐ近くの民家が壊されたり、あるいは軍施設の近くの療養所が攻撃されて、死傷者が出ているということはありました。それは、それほどの被害ではないわけです。

問題はこの44度より南です。ここに右側に青でマークした都市が、コソボ以外では非常に大きな被害を受けているところです。これが、ベオグラードとコソボを結ぶ幹線道路です。ここに予備役を集結するバラックとか、あるいは大きな、主だった通信施設、電力施設、交通機関を軒並み攻撃しているわけです。ここになると、もう戦略目標というよりは、直接被害を狙って、あるいは補給路を断ち切るという形で空爆を行っているわけです。さらにコソボの中になると、兵力そのものを撃破するというのが目標になっています。一説には、私がユーゴ連邦の環境大臣に聞いたら、民間人の死者が2千人で、負傷者が5千人だと言っていました。あながち、それは誇張ではないと思います。

私は、誤爆という言葉を使うこと自体、マスコミは非常に慎重でなくてはいけないと思います。例えば、中国大使館です。中国大使館は、目標、ターゲットに正確に当たっているわけです。これは誤爆ではなくて、たまたま対象が違っていたわけです。つまり、CIA(中央情報局)が武器調達庁だとターゲットを絞ったところで、そこにミスがあったわけです。ただし、狙った場所は正確に当たっている。確か、あそこに5発当てていると思います。そういう場合もあります。

あるいは、橋や鉄橋を破壊する。これもピンポイントで破壊するわけです。当然、そこにケーブルが走っている、電力線が走っている、通信線が走っているということで、効果的なターゲットです。日中にこれをやるとすれば、たまたまそこに列車が通りかかる、あるいは、民間の車両が通りかかるというのは予想されるわけです。ですから、これを誤爆と言うのは、言葉として正しくないと思うわけです。ということで、誤爆という言葉を簡単に使うべきではないと、私は思いました。

なぜ、こういう話をしたかと言いますと、今のご質問にもあったと思いますが、空爆が何の目標で行われていたのかということです。

 

 

 

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