私が見た印象では、NATOはターゲットを拡大していって、最終的には産業施設、工場、電力、通信施設を破壊しているんです。私は主な目的はそこにあったんじゃないかと思うわけです。つまり、ミロシェビッチ政権に打撃を与える、経済力に打撃を与えるというのが、後半の戦略目標だったと思います。
C 普通は、空爆で、戦略空爆といったら、そういった施設を破壊しますね。
外岡 私が申し上げたいのは、ミロシェビッチ政権そのものを揺るがせるという政治目的もあったんじゃないかと思うわけです。
C あ、失礼しました。
外岡 それはなぜかと言うと、その後のコソボ復興についてのアメリカの対応を見ていますと、ミロシェビッチ政権が続く限りは、ユーゴには援助しない。コソボには援助するという形です。今、復興会議を開いているわけです。バルカン会議でも、ユーゴだけは招かないという形です。やはり、最終的にはミロシェビッチ政権を倒すというのが、今のアメリカの目標になっているんだろうと思います。
軍事力の行使が成功だったかどうかというのは、かなり長期的に見なくてはいけないんじゃないかというのが、私の考えです。ただ、それをどこの時点で評価するかということで、随分、結果としては変わってくると思います。例えば、湾岸戦争であれば、地上戦で勝利を収めて、イラク軍が撤退した。この時点で明らかに勝利でしたでしょうし、これは今でも動かないだろうと思います。
ただ、その場合と、今回のユーゴ空爆は、多分違うんじゃないかというのが、私の今の段階での全く印象ですけれども、直感的にそういう感じがします。ですから、最終的には、数年先まで見ていないと、今回の結果がどうだったのかというのはわからないんじゃないかなという、素人なりの感想を持ちました。
C ありがとうございました。
司会 セミナーのほうはこれで終了といたします。
外岡さんと直接、懇談の席を設けております。お時間のある方は、そちらのほうで、ご質問等、お話しなさってください。本日は、どうもありがとうございました。
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