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確かに、何を戦略目標として設定するかということにかかっているんだろうと思います。おっしゃるように、セルビア軍を、あるいは連邦軍を撃破するのが目的ではなかった。ということであれば、恐らく交渉のテーブルに付かせることが目標であったということであれば、成功だと言ってもいいのかと思います。

ただし、先程申し上げたように、自己委任をしたNATOのスポークスマンの発表の内容を聞いていますと、最初は、確かに交渉のテーブルに付かせる、あるいはエスニック・クレンジングをやめさせると言っていたのが、途中から、ミロシェビッチ政権の追い落とし、最後が難民帰還が目的になっているわけです。

確かに難民帰還は、最終的に達成されたわけですけれども、交渉のテーブルに付かせるということが最初の目標であるとすれば、恐らく武力行使をしない手段で、まだ交渉を続ける余地はあったと思います。ランブイエ和平会議がかなり一方的に打ち切られたということ、それから、そもそもセルビアにとってはのめる内容ではない、むしろ空爆を後から正当化するような形で交渉を進めていた節があるということから見ても、私は、ほかの手段によってまだ交渉による解決を追求する余地があったのではないかと思うわけです。という点で、今のご意見と食い違う点はあるんです。

ただNATO側から言えば、これ以上起きたかもしれない民族虐殺をやめさせた、あるいはミロシェビッチ政権に打撃を与えたという点では成功だと言っていますし、恐らく全般の評価はそういう形で定着していくだろうと思います。

ここで、私が見た空爆の実態を簡単にご説明したいと思います。この地図、ここに青い線が引かれています。ここがクライブェーボという中都市です。ちょうど北緯44度になっています。ここから北については、NATO軍が戦略目標を攻撃しているわけです。例えば、ここにあるノビサド、第二の都市ですが、ここの工場、工業施設、精製施設、ここのパンチェボというベオグラードの近くにある石油精製施設を、何度も攻撃しているわけです。

それ以外にベオグラードの中では、こちらの地図、ここにあるのが国防省であったり、統合参謀本部であったり、市内の主な空爆地点です。ここが私がいたホテルです。ここがミロシェビッチ率いる社会党の本部ビル、ここに中国大使館があります。こういうふうにピンポイントで巡航ミサイルやレーザー誘導ミサイルで攻撃しています。本当に見るとびっくりするような精密爆撃です。

 

 

 

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