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もう1つは、NATOと言っても、今度、ヨーロッパ連合の大半の国は、今、社民党政権です。アメリカは別ですけれども、ヨーロッパは、ほとんど社民党が政権を握っていると思います。社民党は、労働と社会党その他、社民党を含めて、戦闘行為については、さらにセーブした対応をずっと取ってきたと思います。そうすると、今度、NATO全体で決めています。軍隊を出さない国もたくさんあります。異議を申し立てたのはギリシャぐらいではないか思います。それにしても、各国全てが対応が一致したわけです。それは社民主義の変質と見てもいいのかどうか。

もう1つは、違う観点ですが、外岡さんは、ある雑誌に多文化主義のことについて書いておられたと思います。そういう観点から見た場合のコソボ問題はどういうふうに捉えたらいいかということについて、お伺いしたいと思います。以上です。

外岡 どうもありがとうございました。1点目は、国連に対する挑戦ではないか、作り直す時期に来ているのかどうかということです。NATOの考え方は、G7(先進7カ国蔵相中央銀行総裁会議)あるいはG8は安保理に代わる、いずれはそうなるというふうに見ている人たちが結構いるんじゃないかと思います。少なくともヨーロッパに関してはG7でやるんだという考え方だろうと思います。

私は、中国を抜きにして国際問題を解決していくということはできないと思いますし、中国を抜きにした形での国連迂回は将来に禍根を残すでしょう。確かに国連に対する挑戦ではあると思いますけれども、ここに国連が何らかの形で再興されない限り、恐らくG7、G8だけでは解決するのは不可能だろうと、多分、アメリカは一極支配に基づく、非常に簡単な意思決定システムを作りたいという考え方だろうと思います。

1つには、大国の関心を引かない領域での紛争を誰が対処するのか。それから、アジアに対してどうするのか。中国抜きでそんなことができるのか。この2つの問題が解決しない限り、アメリカによる一極支配は、理念上はあり得ても、現実はあり得ないだろうと思います。恐らく、アメリカの国内でもその意思はないと思います。今、たまたま経済的に上り調子で来ていますから、世界の警察官的な役回りについてのノスタルジーはあると思います。けれども恐らくアメリカ単独ではそれだけの能力は今後ないだろうと思います。

確かに国連に対する挑戦ではあると思いますが、冷戦期であっても、例えばベトナム戦争があり、アフガニスタン侵攻があり、カンボジア紛争がありという形で、無数の地域紛争は過去にあったわけです。

 

 

 

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