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特に戦時体制下で、部隊を隠したり、あるいは中央省庁を移動させたりするような場合には、本当にもぬけの殻になっています。ベオグラードの建物は確かにピンポイントで参謀本部とか治安部隊の本部は破壊されているわけですけれども、実際にはもぬけの殻になっていて、何の影響もなかったと言われています。空爆だけでは恐らくそれほどの打撃を与えられないということを、北朝鮮が今回の教訓として受け止める可能性はあるだろうと思います。

ただし、コソボと朝鮮半島情勢をパラレルに見るのは、間違う恐れがあると思います。在韓米軍だけで3万7千、在日米軍4万7千を含めて、ある意味で在韓米軍はソウル南方で人質になっているわけです。攻撃と同時に相当数の死傷者が米軍にも出るというのは、はっきりしているわけです。ですから、アメリカの今の国内事情からいうと、まず自軍に死傷者を出さないというのが最初の原則になっています。

今回もマケドニアで3人捕虜になっただけで、あれだけの大きな騒ぎになっているわけです。自軍の若者の戦死者にはとても耐えられない、政権が保てない情勢になっていると思います。だから、今回、コソボがあったからといって、直ちに朝鮮半島でアメリカが先制攻撃に踏み切るということは、私は、オプションとしてはあり得ないことだと思います。核開発がはっきりして、ミサイルの射程が米本土に達するということがはっきりした段階では、また別の話ですけれども、現状では、コソボと同じような状況が朝鮮半島に起きるというようなことはまずあり得ないと思っています。

2番目のPKOの第2世代のことですが、ご存じのように、PKOは国連憲章第6章は平和的な解決、第7章で強制措置を取れるという章立てになっています。その中間、6章半と言われるのがPKOです。PKOの第1世代は勝手にマスコミがそう名付けただけです。私が理解している範囲では、この第1世代PKOは幾つかの原則があったわけです。多分、紛争当事者の受け入れ合議が必要だ。あるいは、停戦決議がなくてはいけない。武力は行使しない。軍の引き離しとか、あるいは武装解除まではするけれども、それ以上の武力行使はしないというのがブルー・ヘルメットの第1世代と呼ばれている原則だったと思います。

それが先程ちょっと問題になりました、ガリ事務総長が「平和への課題」ということで、停戦後は平和実施部隊が直接乗り出して、限定的な武力行使をして、平和を執行するんだという構想を打ち出して、これが実現したのがボスニアでありソマリアだったわけです。

 

 

 

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