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かつて、フランスのミッテラン大統領も、国連に迅速展開部隊を作るべきだと提唱したことがありますし、ロシアもそう言ったことがありました。国連の中でもPKO、PKFを、もっと緊急展開部隊のように変えていくべきだという声があります。これについても何らかの解答を出すなり、あるいは、考えていかざるを得ないのではないかと思います。

4つ目ですが、では武力だけで解決できるかと言うと、これはかなり問題があると思います。今回、流出した難民は80万を越して、一説には100万と言う人もいます。80万人以上の難民がこの短期間に外に出て、現在、50万人以上が帰っていると言われています。これだけの難民を出して、結果的に何が残ったのかと言うと、一説には6割近い家屋が破壊されている。これは、もちろん民族浄化も1つの原因ですけれども、最後まで残る疑問としては、もしNATOによる空爆がなければ、今回のようなエスニック・クレンジングあるいは、大量の追い立てがあったのかどうかということを、私は、未だに疑問に思うわけです。もちろん、大量虐殺があった、ラチャック村で40人ぐらいのアルバニア人が殺されたという事件が、今年の1月に問題になりましたが、それ以外に、空爆前に大量の虐殺があったという報告はなかったわけです。もしかすると、空爆が引き金になって、そういう虐殺の口実を与えてしまったという可能性も捨て切れないのではないかと思います。空爆によっても、結局、民族追い立てを食い止めることはできなかったわけですし、むしろ、難民流出を加速した可能性もあるだろうと思います。

だったら、ほかに手段はあったのかと言われると、私は言葉に窮してしまいます。ただ、今回のNATO空爆で問題は解決したかというと、これも解決していないと言わざるを得ないと思います。問題は引き続き、先送りされていますし、アルバニア人とセルビア人との間の対立も険しいまま残っているわけです。つい先日も、プリシュティナで14人のセルビア人が虐殺されたという報告があって、セルビアは連邦軍を引き戻せと国連に申し入れしました。これから先も、同じような不安定は続く可能性が強いと思います。ですから、武力行使も問題解決にはどうしても限界があるというふうに、一方では考えていなくてはいけないかなと思います。

非常に雑ぱくなお話でしたけれども、ここで私の話を終えさせていただいて、後は、ご質問に答えさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

 

 

 

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