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もう1つは、非常に予算がかかる。国連の通常の予算は年間10億ドルですけれども、一時は、20億ドルのPKO費がかかるという状況になりました。とても、予算上維持することはできない。主にこうした2つの理由から、第二世代のPKOが行き詰まった。しかも、紛争が起きてから展開するまで大体3ヶ月はかかるため、とても急な紛争には間に合わないということで、国連を迂回した形で、直接武力行使をするべきだという機運が出てきたんだと思います。

この兆候は、去年の12月の米英によるイラク攻撃にもあったわけです。もう国連の決議を待っていられない。特に、今回の場合は、中国とロシアがあらかじめ空爆に反対を表明していましたので、安保理にかけた場合に、よくて棄権。最悪の場合には拒否権を発動される。それを待っているわけにはいかないんだというのが、アメリカとイギリスの言い分だったわけです。

5番目の特徴としては、アメリカの軍事能力の突出ということが、内外にはっきりと示されたということだと思います。湾岸戦争の場合も、それは言えたわけです。ただし、あのときには精密誘導爆弾は全体の1割未満でした。ところが、今回は、レーザー誘導その他の、あるいは巡航ミサイル等の精密誘導爆撃が全体の6〜7割を占めていると言われています。これだけ大量にピンポイントで爆撃をした例は戦史上にも例がありません。

当然、これだけの能力を持っているのはアメリカだけですし、今回、NATO軍と言っても、全体の8割は米軍が航空機を派遣していたわけです。事実上、アメリカの一極支配の下での多極協力という形で平和を維持するということが、1つの方針として、これで示されたと言えるのではないかと思います。

ところが、その一方で、同時に明らかになったのは、空爆だけで本当に効果があったのかという疑問が出ていることです。例えば、ユーゴ軍は350車両の戦車をコソボに派遣したと言われていて、NATO軍の発表では3割は破壊したということでした。ユーゴ側の発表で13台、少なくとも300両の戦車が撤退時に確認されておりますので、最大に見積もっても、50両しか破壊されていなかったと言われている。つまりNATO発表の空爆は、過大に見積もられていたと見られるわけです。

 

 

 

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