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B ある種の恫喝は必要だなという面はあると思うんですが。

長島 例えばどういうケースですか。

B 例えば、佐藤守さんという南西航空混成団だったかな、あそこのチーフだった方が、尖角列島に台湾からヘリコプターが飛ぶという話があったときに、彼はアラートをかけたんですよね。かなり強引にというか、EBCを6機ぐらい。ずっと24時間、capというんですか、F15をEBCの少し下のほうに配置して。来たら叩き落とすという態勢をとって、これは一種の恫喝じゃなかったかと思うんですが。もし来たら落とすぞというはっきりした意思表示をしたわけですよ。そういう表示をしない限り、相手に抑止するなんていうことは可能ではないんじゃないかと思うんですね。今回の警告射撃の問題についても、実際に落とさなければ。1972年ごろだったかな、沖縄上空をソ連の飛行機が飛んだことがありますが、あのときも落とさなかった。単なる警告にすぎなかった。今回の船の場合でも、やはり沈没させなかった。そういうようなことが、必ずしも抑止につながらない。もう少し恫喝的な部分がなければ、抑止にすらならないのではないかというのに、私は非常に疑念をもっているんですが。佐藤さんは、辛うじて最後の武士の魂をもった人で、そこまでやったんですが、お陰ですぐに辞めさせられましたけれども。そういう体質を自衛隊がもっているということが、一つ私は疑問なんですが。

長島 それは自衛隊の体質より、やはり政治の問題でしょう。

B そうですね、政治がそういうものを容認しない、ちょっとした恫喝ぐらいも容認しないようないわゆるそういう感覚みたいなものが日本人には、あまりにもありすぎるんじゃないか。

長島 確かにおっしゃるようなフラストレーションを私も一部共有します。恫喝という言葉が適切かどうかは、別にしてですね。ただ抑止力というのは、刀はいつも抜ける状態にしておかないと、それは相手に対して凄みがないですから。しかし抜くことが本当に武士として、正しいかどうかはこれはまた別の問題だと思います。

B ああそうですよ。ただ法的に根拠があれば撃つべきですよね。

長島 もちろんそれはそうですね。ですから、政治の問題と申し上げたのは、現行では、有事法制もない、ROE(交戦規則)も定められていない、首相官邸と現場の意思疎通もままならない、そういうことでは最新鋭の戦闘機やイージス艦をいくら持っていても有効な抑止力にはならないですね。

 

 

 

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