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その立法過程で、特に第1条において、自衛権行使には個別的、集団的の区別はない。ただし、第三国に入っていって武力行使はしない、というようなかたちで改めて憲法9条の国会における有権解釈を示す。こうすれば、相当すっきりするんじゃないかと思います。

以上述べてきたように、わが国の安全保障政策をめぐる議論というのは、安全と安定、抑止と安心という二つの概念のバランスのなかで、深められていくべきだろうと思います。その際には、やはり日米同盟というのが、本当に一番使い勝手のよいツールなんだろうと思います。そして、ここまでコンセンサスが出来れば、アジア太平洋地域で今後起こるであろう三つのショック、一つは朝鮮半島の解決(あるいは北朝鮮の崩壊による南の吸収)、もう一つは台湾海峡の問題の解決(あるいは紛争)、そしてもう一つは中国の不透明な将来がどうなるか、こういうものに有効に対応し得る政策なり戦略なりが組み立てられると思います。その上で、日本に役割が期待されるとすれば、そういうことが一つ一つ解決されていった中で、恐らくアメリカ側もまた負担の分担ということをまた持ち出してくるに違いないんですね。唯一の超大国といっても、いまの世界へのコミットメントのレベルを永遠に維持することは不可能ですから。そういったときに日本が、地域の多国間の安全保障体制構築をリードする立場に初めて立てるだろうかと考えるわけです。今までのように、日米同盟さえとにかく維持していればあとはもういいんだ、本土防衛のための国防政策さえやっていればいいんだ、多少周辺国から誤解されても、という考え方は捨てるべきではないか。そういうミニマリスト的な消極思考ではなくて、今後起こってくる三つのショックが終わって、次にどこの国がリーダーシップを取るんだといったら、それはやはり日本が積極的に手を挙げるべきだと考えます。その時のことを念頭に置いて、リーダーシップを取るに値する、取る資格があるかどうかを内外に示すのが、まさに今日のわが国の安全保障政策のポイントなんだろうと思います。そんなことをいつも考えながら、総論的な話になりましたが、個別の話は皆さんと議論を深めていきたいと思います。ありがとうございます。(拍手)

 

 

 

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