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そういう中で、少なくとも理論上は、日本が一定の政策的な影響力を確保することができると考えます。もちろん、日本が影響力を行使するためには、それ相応のコミットメントをしなければいけないし、プランが必要だし、ストラテジーが必要なんですが、とにかくシステムとしては、メカニズムとしてはそういうものをつくっていって、日米対等の同盟関係というものに少しでも近づいていけるようにするのが、今後の大きな課題の一つなんだろうと思います。

この点でもう一つだけ付け加えるならば、いま議論になっているTMDの問題ですね。このTMDというのは恐るべき効果がありまして、このTMDを進めていくとどんなことが起こるかというと、日米の軍事組織が限りなくインテグレートしていくんですね。つまり赤道上を周回する米軍の早期警戒衛星から、ミサイルの発射を大体2分後ぐらいに赤外線で感知するそうですけれども、撃ったという第一報は日本の防空コマンドにリアル・タイムで届けられる、そして司令官が瞬時に判断してTMDシステムを作動させそのミサイルを撃ち落とす。この間、せいぜい数分の出来事です。これは軍事技術革新が起こって、例えばTMDを通して日米軍が限りなくインテグレートしてくるとどういうことになるかを如実に示しているわけです。つまり、今まで日米同盟で問題になったのは、例えば朝鮮半島危機に直面し、DAY-1(第1日目)に日本は何をするかでした。今はそれすらもおぼつかない状況ですけれども。しかし、TMDの配備が何年先になるか分かりませんが、TMDが本当に配備されるような状況になると、もうDAY-1どころではない、最初の1時間、最初の1分、いや最初の1秒ですべてが決まってくるわけです。そんな場合に閣議決定を、法改正を、などと言っている暇はないんです。従って、緊張した防衛関係になっていく。今ガイドラインでやろうとしているのはそういうことです。そのガイドラインを基礎にして推し進めようとしているTMDというのは、そういう帰結をはらんでいるんだということをぜひ理解していただきたいと思います。これは別にTMDに限らないのであって、NATOのような同盟関係の中ではあらゆる軍事作戦でこういうことが起こると想定され、日頃から政策調整、共同作戦計画、共同訓練、共同意思決定メカニズムが整備されているのです。

時間も大分たってしまいましたが、安全保障政策のもう一つの柱である「安心戦略」、安心などと言うと力が入らないんですけれども、「reassurance strategy」の説明を少ししたいと思います。

 

 

 

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