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しかし、これは有名な笑い話ですが、例えば、ベトナム戦争の時に沖縄から出撃したB52が北爆に参加する際、米軍側の説明(従って外務省の理解)では、あれは訓練のために沖縄を飛び立って、途中でオペレーションの指令をもらって、そこからベトナムへ直行した、だから事前協議の対象にならないんだと。こういうふうにしてきたわけです。奇妙なことに、外務省は今まで事前協議は何度もあったと言うし、アメリカ側は事前協議は1回もやったことがないと言うし、どっちが本当か、恐らく両方の言い分が一面の真理をついているのでしょう。(笑) でもさっきも申し上げたように、本当の事前協議を行うには敷居があまりにも高かったんで、大っぴらにはやらなくてもすんだ。これが地主の実態であります。

ところが、これを新しいガイドラインでどうしたかというと、日米の共同作戦計画に基づいて、共同意志決定プロセスを経て、政策調整メカニズムを通して、共同で対処しましょうと。だから、今までパッシブに土地と施設だけ提供していたものを、今度はアクティブに軍事的なサポートを、後方支援でありますが、軍事作戦上の支援協力を行う。これはすでに、NATO(北大西洋条約機構)、あるいは米韓同盟などではもう何十年も前から適用されていた内容なんですが、今回初めて、日米間にガイドラインというかたちで組み込まれた、これが画期的な意義の2番目です。

3番目は何かというと、そういうことに日本がコミットする結果どうなるかというと、日米同盟体制というのは、単なる日本防衛の道具だったものから、初めてアジア太平洋地域全体を見据えた日米の共同行動の基礎になる。共同行動というのは、共同計画、政策調整、そして共同意志決定を通じて、日米が初めて本当の同盟関係に、すなわち同盟国として共同して事にあたるという姿になる。これによってどうなるかというと、ここが一番重要なことなんですが、日本が初めてアジア太平洋地域におけるアメリカの政策に影響を与えることができる。つまり、これはアメリカの専門家の言葉ですが、「同じボートに乗って初めて、目的地に向けた舵を握ることができるのだ」と。

だから、共産党が言うように「自動参戦装置」とか、何かアメリカに一方的に押し付けられてガイドラインを策定したという見方は的外れもはなはだしいと思います。このガイドラインに盛り込まれた活動を日本が果たすことによって、どういうことが起こるかというと、例えば、後方支援地域については、米国は徐々に日本に委ねていくことができる。

 

 

 

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