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1980年代の前半に中曽根首相が、アメリカ側の協力もあって、日米軍事同盟のローズ・アンド・ミッション・シェアリング(任務・役割の分担)ということで包括的な安全保障政策の展開をやりだしたんですけれども、結局は、冷戦後になるまでこの周辺で起こる事態が日本の安全に重大な影響を及ぼす事実を、具体的な政策のかたちで反映させることができずにきました。「専守防衛」ということで、もっぱらホーム・ディフェンスに徹し、朝鮮半島や台湾海峡の問題はアメリカに任せてきたわけです。

さて、そこで、新ガイドラインをどう見るかですが、「日米同盟の再定義」ということが言われました。新しいガイドラインについては皆さんにもいろいろなお考えがあるだろうと思いますが、私は次の三つぐらいが特に重要だろうというふうに考えております。

まず1番目は、今申し上げた佐藤・ニクソン・コミュニケを具体的な政策をもって再確認したことです。このコミュニケ以来初めて、外部環境の安定というものが日本の安全保障に重要であるという認識を日米双方で共有して、そのための具体的指針、その達成手段、実現方法を政策レベルで明らかにしたというのが第1の意義です。

第2点は、日本の対米協力の質が根本的に変わったことです。これまで日本は、在日米軍に対してどういう立場であったかというと、もっぱら「地主」のような立場であったと言えます。つまり、基地と施設は提供しましょう、しかし、それが何に使われるかは聞きませんから言わないで下さい、国内論議が面倒なことになりますから、というものでした。とくに、民主党などが盛んに主張する事前協議の問題。日米間の基地・施設使用に関する事前協議、これは、1960年の安保条約改正時に岸首相とハーター米国務長官との間で交わされた交換公文で定められたのですが、この事前協議に入るには敷居がものすごく高く設定されていて、現実的には事前協議がほとんどできないようなかたちになってきました。師団規模の兵力の移動展開があった場合、核兵器など大型兵器の持ち込みがなされた場合、あるいは軍事オペレーションのために米軍部隊が直接日本の基地や施設から出動する場合には事前協議が必要ということになっています。

 

 

 

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