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もちろん、北朝鮮の不審船が来て、日本国内に工作員を送り込んでくるならば、それに対して領域警備をしなければならない。これは当たり前の話ですね。私も、向こうでアジアの人たち、例えば韓国の人や中国の人たちと議論をするときに、最近よく言っているのは、一国の安全保障政策というものは、まず第一義的に、自国民の安全の確保、財産や生命の確保、あるいは重大な利益の確保にある。従って、政策の中身は外部環境が変化していけばおのずと変化していく、これは仕方がないんだと。ただし、今の日本の国内論議は、それと同時に行わなければならない重要なことを怠っているんだ、というふうに説明をしています。言うまでもなく、「安定した環境」の創出という観点が欠落しているというわけです。で、結論を先取りして言うと、こういう意味で安全と安定の両方をバランスよく確保していくためには、日米安全保障同盟というのは、非常に使い勝手のいい道具であるというふうに私は思っております。ここでは、まず、安全と安定という二つの政策目標を強調しておきたいと思います。

このように考えてきて私の安全保障政策のスタンスを一言で言えば、あくまでも「現実主義」(リアリズム)の立場に立ちます。つまり、本質的に国際関係の基本は対立的、競争的なものであり、これを安定させる道は「バランス・オヴ・パワー」であり、各国の安全確保の原則はあくまで「セルフ・ヘルプ」です。

しかし、安保政策の策定にあたっては、安定的な環境の創出ということも非常に重要ですから、言いかえれば、抑止というのはやり過ぎてもやらな過ぎてもいけない。抑止と対外的安心の組み合わせ、すなわち、ここでは特に「リアシュアランス」(reassurance)というポイントを一つ強調しておきたいと思います。具体的にはどういうことかというと、精強な国防、すなわち、テクノロジーの上からも彼らの軍事バランスの上からも、十分な即応力のある国防力を維持しつつ、場合によっては同盟関係を背景に抑止を図る。また、その一方で、国際秩序の維持に対して責任ある立場を貫く、これは「リスポンシビリティー」ですね。それから、その政策を進めていく際に、なぜそのような政策や装備や兵力構成が必要なのかについて説得力のある立場、明確な論理、理由付けが必要である。そして、なかんずく透明なプロセスでそういうものを遂行していくべきだ。これが「安心戦略」の三つの要素であります。レジュメの3番目にある、安心戦略の3本の柱:リスポンシビリティ、アカウンタビリティ、トランスペアレンシーというのがそれです。

 

 

 

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