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あとでちょっと触れますが、この点で最近非常に評価できる動きが出てきたなと思いますのは、このほど国会両院に憲法調査会が設置されることになったことと、民主党の議員を中心として提唱されている(正式名称はよく分からないんですが)前の戦争の実態調査に関する調査会を国会図書館に創設する動きです。要するに、今まで公表されてこなかったクラシファイドのままの資料とか情報、主に行政情報を開示させようというわけです。私は、これらは非常に重大な意味のある動きである、しかも、これらが同時に起こってきたことの意義はきわめて大きいと思っています。これらの動きが今後どのように展開していくか見守っていきたいというふうに思っております。

そこで、安全保障政策なんですが、私が安全保障政策といったときにはそれをどう捉えるかはレジュメの2番目をご覧下さい。すなわち、単なる国防政策や防衛政策ではない。安全保障戦略とか安全保障政策といった場合は、国防政策と少なくも国際関係とを組み合わせたものだろうと。つまりその目的とするところは、「国家の安全」、つまり国民の生命、財産、利益の確保。そして「安定した環境」、国家の経済的繁栄を可能にするような国際環境の醸成。端的に言えばそういうことになろうかと思います。

先ほどから何度も申し上げているように、いま日本で盛り上がっている国防論議というのは、言うまでもなく国防(私のカテゴリゼーションからいいますと前者)のみに焦点を当てているので、外から見ると非常に偏った印象がぬぐえない。そこで、(後者の)「安定」という観点を加味しないとならないと思うわけです。先ほど申し上げたように、自前の偵察衛星を持ちたいとか、先制攻撃もできるんだぞとかいった勇ましい議論の行き着く先は、核兵器も持てる、パワープロジェクション・ケーパビリティ(兵力を海外へ投入する能力)も持てるんだということでしょう。実際、ある海上自衛隊の一等海佐の方がワシントンに来られて、米側の政策担当者と議論になるわけですね。日本も空母を持つべきだと主張するのです。日本の国防上これは必要なんだと。ところが、アメリカ側から随分邪魔されてきた、もう邪魔しないでくれというようなご発言もありました。アメリカ側は、日本のこういった議論に対しては、当然のことながら地域の「安定」ということに非常に神経質になるわけです。言うまでもなく、日本の空母保有が地域の軍事バランスを崩してしまうというわけです

この安全と安定のバランスというのは非常に重要なんですが、もし安定という部分を捨象して、安全ということだけを考えていけば、まだ心配だからあれも、まだ不十分だからこれも、とブレーキは利かなくなるわけです。

 

 

 

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