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こういうふうに日本に安全保障政策が根付かないのはどうしてなんだろうかと考えるに、一つは、地域論、地域政策や、あるいは軍事戦略論やあるいはテクノロジー、軍事技術や国際関係、経済、エネルギー政策といったようないろいろな分野の学者、研究者、専門家を一堂に集めて、何か一つの問題、例えば朝鮮半島の危機を解決するにはどうしたらいいか、というような具体的な課題を縦横無尽に論じてもらう学際的なフォーラムが、日本にはあまりにも少ないんじゃないだろうか。ワシントンだけでも大小100近くの外交関係シンクタンクがひしめいているアメリカにおりまして、そのようにつくづく感じます。今日は橋本(光平=PHP研究所研究部長)さんが来られていますけれども、彼とは、岡崎研究所(元外交官の岡崎久彦氏が主宰する安全保障専門のシンクタンク)、アメリカのCSIS(国際戦略研究所)、韓国のヨイド・ソサイエティー(新亜細亜秩序研究所)が三者共同で進めている日米韓の安全保障協力を模索するプロジェクトでご一緒させていただいております。これは先駆的、学際的フォーラムの数少ない成功例の一つですが、そういうことが日常茶飯事で行われているアメリカと比較すると、彼らの差というのはそういうところがら出てくるんじゃないかと感じます。もちろん東京財団でやろうとしていることは、まさにそういうことなんだろうと理解しております。

もう一つの問題は、やはり安全保障や国際関係を集中的に学ぶ「プロフェッショナル・スクール」が日本にはないことですね。そういった高等専門教育機関を通じて出てきた人たちが具体的な政策立案にかかわり、あるいは議会のスタッフとして働き、シンクタンクに移り、また何年かして政権の高官として政策の現場に戻っていく。そういうところでもまれた人たちといざ議論するとなると、日本人が途端に太刀打ちできなくなるという現状は深刻であると思います。

自分も決して偉そうなことが言える立場ではないんですが、今日はそんなことを一人で語りつくすことは到底不可能なんですけれども、たっぷり時間もあることですし、私が常々安全保障というものをどう考えているか、念頭に置いておくべきと思われるようなことを総論的にお話しさせていただいて、中国をどうするだとか、朝鮮半島をどうするんだとか、また、どんな日本のフォース・ストラクチャー(兵力構成)が望ましいか、そういう各論については、皆さんとの議論の中でお互いに理解を深めていきたいというふうに思います。

 

 

 

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