今でも実は各省庁設置法を見ると、権限は乱用されないようにきちんと書いてあるんです。大体、各省庁設置法の第4条を読むと、例えば大蔵省は、「それぞれの法律に基づき次の権限を行使する」と書いてある。ところが、えてして、そこのところは読まない。各号には、実際大変幅広いことが権限として書いてありますから、そうでなくても、例えば銀行業界など、行政指導でも法律以上に重く受けとめる業界もいっぱいあるわけです。それで、非常に紛らわしいということで、今度はその権限を落とすことにした。そうするとどういうことになるかというと、総務省の評価局(現行政監察局)が各省のやる政策評価をどういうふうにすべきだとか、政策評価の基本的な事項の企画・立案をしたりする。これはこれでいいんです。総合調整機関として総務省がそういうことをやることはいい。ところが、自らが行う各省庁の総合的な政策評価とか、行政評価(監察)とか、あるいは特殊法人の調査とか、あるいは補助金の受け手を調べるとかになりますと、これは権限として別に、例えば行政評価法というものをつくらないと十分に機能しないだろう。設置法には権限がないということになっていますから、行政監察局の仕事は評価ということになりますが、これは権限ではない。政府の中でごそごそやっているだけの話ですというふうにとられることになるのではないか。ただ、中央省庁等改革本部の事務局によれば、設置法だって法律ではないですか。基本的に政府の中での評価なのですから、設置法に書いたっておかしくないではないか。
国家行政組織法を見ると、各省が自らの評価をすることは書いてあっても、今話したことは、総務省設置法にしか書かれていないわけですね。総務省設置法をご覧になれば、おもしろいことに、通常の省庁、財務省とか、厚生労働省だとか、文部科学省だとか、そういう省は全部、第1条に目的が書いてあって、第2条の1項に国家行政組織法に基づいて等々と、この省を置くことが書いてある。その第2項に、例えば財務省の長は財務大臣とするとか。必ず第2条にその長がだれかということが書いてある。総務省と環境省は違いますが、総務省設置法をご覧になれば、第5条に総務省の長は総務大臣とすると書いてあるんです。そして第6条に「勧告及び調査等」として、総務大臣の勧告権や調査権が規定されている。今言った行政監察などの権限とは書いていないのです。だから、権限でない権限を振るおうとするわけです。