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【改革の命綱である『評価』がこれでは機能しない】

 

最後が一番大事な話でありまして、「命綱である『評価』が十分機能しない……」と書いてあります。政策評価や行政評価は、行革会議の審議で一番欠けていた問題だと思います。というのは、評価できることは、今までの行政というのは、例えば国会の予算委員会をご覧になればわかるように、予算をつくるときばかり私たち日本人は血道をあげます。各省も国会議員も。ところが、決算委員会に行ってごらんなさい。閑散としています。3年前ぐらいの決算を審議していますよ。私たちは、物事を始めるときはみんな元気を出します。ところが、済んだ後は、戦争に負けたときに一億総懺悔と言ったように、なぜ負けたかということを追及することを非常に嫌います。みんなが悪い。一億総ざんげ。済んでしまったことをほじくり返すのは、潔くないというわけです。

つまり、こういうことなんです。あることを評価するということは、通常、必ず済んだことを見るわけです。そうすると、だれがどう悪いか、どの仕組みが悪いか。だれがどう悪いということになると、具体的に人が、仮に死んでいても後輩がおりますし、ましてや生きていれば、だれがこういうことをやったからこうなったんだということが非常に問題になってくる。それから、あるシステムがやっぱりおかしいんだということを言いましても、このシステムをつくった人がいるわけです。そうすると、個人を傷つけちゃいけない、済んだことじゃないか。済んだことをがちゃがちゃ言うなと、そういうことを頭に置いて新しいことをつくればいいじゃないかと言いますが、しかし、済んだことについて徹底的な分析がされないために、再び過ちが起こりがちなんです。

私は、今度の法律を評価しているんですよ。国家行政組織法の中に、各省は必ず政策評価をしなければならない。政策をつくろうとするときに事前に評価し、事中に評価し、事後に評価する。自ら評価することになっています。国家行政組織法自体には、評価の結果を公表するということは書いてありませんが、毎年評価したことをオープンにしていけば、仮に勝手な評価をすることがあっても、自分で自分を評価するのですから、勝手な評価をしても何年か続けていけば、評価の方法、評価そのものが評価の対象になります。環境影響評価法がいい例ですけれども、何を、どういう方法で評価しました、その結果はこうでございますというふうにしていけば、だんだん国民が知るべきことを求めるようになります。そうすると、たとえ初めはいいかげんな評価であっても、だんだんよくなるはずです。少なくとも、そういうふうな仕掛けが今度は入ったわけで、高く評価すべきだと思っております。

 

 

 

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