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この前、エリツィンが発表した教書などを見ると、まだCIS重視を一応掲げていますけれども、今後、ロシアがCISに対して投資できるというような状態ではないし、特に、経済面でも、関税同盟条約などはほとんど機能していないし、CISで何百、何千もの文書が出ても、それがほとんど実行されていないというような状態からすれば、今後、CISの影響力というのは、ますます少なくなってくるのではないかという感じがします。

K もう1点ですが、アゼルバイジャンとグルジアの両国がアメリカの空軍基地か何かを招致しようというような動きが書いてありますが、ロシアにとって安全保障の面で、このCISという観点でみると、それはどういった感じなんでしょうか。

岸田 それは、絶対許さないでしょう。NATOの拡大で、旧ソ連のバルト三国、それが今NATOに加盟しようとして動いていますが、ロシアは絶対それは認めないという立場で、基地の提供も認めさせないと。ロシアと比較的関係の薄いバルトですら、NATO加盟は認めない立場で、カスピ海周辺、カスカフ地方などの戦略的重要性の面から考えると、基地をアメリカがつくるというようなことになることは、断固阻止すると思います。

L 私、自衛隊におりますが、職業がらロシアの軍隊がどういう状態かというのに関心があります。先ほどからのお話でだいぶそういう兆候はわかったんですけれども、ロシアの軍隊の士気とか信頼性がどの程度低下しているのか。

もう一つ、中央の政治に対する影響力はどの程度あるのかというのを、ちょっとお伺いしたいのですが。

岸田 ロシア軍の現状については、かなり悲惨きわまりないといった状態です。その一つの例として、私が取材などでつきあっていたロシアの軍人などが、先ほど言いましたようにかなり辞めているということと、それと、転職先でも、例えば将校をやっていた人がビルの掃除をやったりというような状況にある。それでも、「プライドは捨てても金がもらえるのだったらいい」といった人もいるぐらいです。

もっとそれより下のレベルの兵隊になってくると、タバコを買うお金もなかなかない。軍の施設がモスクワ市内にも幾つかありますが、車を停めていると、勝手に車を洗っているんです。迷彩服を着たお兄ちゃんが勝手に外国の車を洗っているんです。何かと思ったらアルバイトだと。

 

 

 

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