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これまでみてきて、そろそろ沿海州については沿海州というふうにナゾドラチェンコと交渉することが必要かなというふうに今は思いつつあるんです。今までは、地方自治体にそんな権限がないものだから、したがってモスクワ経由以外にないと、これはプリマコフが外務大臣のころからそういうふうな対応をずっとしてきています。しかし、少しずつ変わってきているのかなとも思います。それは、先ほどのウラジオ演説みたいなものを受けて、特にザ・バイカルの極東移管長期計画もできたりはしていますけれども、あれはペーパーが出たら終わりなどというロシア的な雰囲気もあるらしいので、その辺、実際向こうからみていてどういうふうに、見続けられるのでしょうか。

岸田 ご指摘のように、日本の商社マンやビジネスをやっている方々と話していて思うのは、ロシアの場合、法律があってないようなもので、それで、コロコロ変わるわけです。例えばサハリンならサハリン、沿海地方なら沿海地方というように、それぞれ独自の法令があるんですけれども、それが、中央と矛盾することがある。そうすると、どっちが上になるのかということです。

一般的に投資して、投資保護協定がこの前調印されましたけれども、それで問題がなくなったかというとそうでもなくて、まだ幾つか訴訟が起きていまして、自分がホテル経営していて、いつの間にか所有権を買い取られてしまった。ビジネスで大損してしまったというような人の話も聞きます。だから、地方と交渉して、例えばそれが中央の反発を買ったらどうなるかというような話とか、まだ、その辺の例がほとんどないので、中央との、例えばビジネスにしても何にしても地方同士のレベルでの話し合いというのは、進めてどの程度の効果があるのかというのは、まだ疑問なところが大きいです。

ただ、日本の地方自治体が向こうの地方自治体と話して、姉妹都市協定とかそういったものを結んだり、交流を深めていくといったことはソ連時代よりはるかにやりやすくなっています。ただ、中央が関心を示すようなビジネスとか具体的な話になってくると、かなり難しい。

一つ、その例として、放射線廃棄物の処理施設、これは前に太平洋で日本海の近くで放射性廃棄物をロシアが廃棄して日本で大問題になったことがあります。それ以来、日本政府はお金を支援して放射性廃棄物の処理施設を極東につくることに決めた。本当は1年半ぐらい前にもうできていなければいけないのですけれども、それがまだ稼働していない。どうしてそういったことになるのかというと、やはり、聞いてみるとそれぞれ権限がいろんなところに分散されていて、あっちで聞いた話とこっちで聞いた話が全然違う。手続き面でもかなり時間がかかって、なかなかうまくできない。

 

 

 

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