もう一つは、この領土問題で、我々は北方領土というパンフレットを外務省監修で出していますけれども、あれを見るとよくわかりますが、北方4島とサハリンの南部は白く塗ってあります。白です。どこも所属が書いてないんです。私は常々この問題はおかしなことをやっているなと思って、北方4島と北方領土というものとサハリンの扱いは平和条約でもポツダム宣言でもみんな扱いが違うはずであって、それを外務省の監修では同じように白く塗ってあるわけです。外務省がそういうふうにしようという気持ちはわかるんですけれども、問題は、モスクワのほうでそれをどう見ているかということに、常々関心があるんです。
以上です。
岸田 まず、第1点について、エリツィンが組閣工作で外されたのではないかという点については、それはないと思います。その理由は幾つかありますが、組閣するにあたって、常に大統領令が必要です。エリツィンが署名しなければいけません。手続き的な面についてはそれがあります。それから、今回の組閣人事でも、一人だけの主張が完全に通ったということはないんです。ベレゾフスキーの意向に配慮しながらも100%ベレゾフスキーの意見が通っているわけではない。チュバイスの意向もある程度反映しながら、ベルゾスキーの顔を立てて、それで首相として一応ステパーシンの主張も聞いている。組閣の調整を行っているのはまず間違いなくエリツィンです。組閣する上で、必ずエリツィンがステパーシンと協議しています。もしエリツィンが組閣作業から外されるような弱い大統領であれば、今回のような事態はなかったでしょう。
第2点目のTさんの件ですが、これは、日ロ関係だけではなくて、そのグローバルな意味でというご指摘は、全くそのとおりだと思います。これはロシアもそうですが、2国間関係だけでは動かないです。ロシアもアメリカを見て、中国を見て、日本を見ながらどういう政策をとっていくか決める。
それで、Tさんについては、先ほど反ロとおっしゃいましたが、むしろ国益主義者といったほうが正しいのではないかと思います。それは少なくとも、外交官であれば当然です。