国民の中で一番支持率が高い政治家というと、解任される前まではプリマコフさんだったのですが、今回解任されて今後どうするかというのはまだはっきりしていないのです。一説には、学者に戻るのだろうというような話も出ていまして、この人自身はもともと権力を狙うタイプではない学者肌の人であります。東洋学研究所の所長なども務めたこともある人物で、周りがかなり支持してバックアップすれば別でしょうけれども、解任されてからも大統領の座を狙うというような感じではないと思います。
「では、次の大統領には誰がなるのか」ということをよく聞かれるのですが、正直言って今のところ名前を挙げるのはかなり難しい。強いて言うならば、ルシコフさんなどはかなり近い位置にはいるけれども、果して彼が当選できるのかというと、その確信は全く持てないといった状態です。今後、選挙を控えて幾つかのシナリオが考えられるのですが、最悪のシナリオである国内の流血の事態は回避されるよう願いたい。今後、ステパーシン首相になってどれだけ安定化に向かえるかといったところです。ただ、そのステパーシン自身はあまり評価の高い人物ではなくて、ロシア軍のチェチェン侵攻を進言したのもこの人ですし、あまり実務家として有能な人物ではないと思われるので、今後もロシアの政治、社会、経済はかなり難しいのではないかと思います。
ロシア政局と直接日ロ関係が重なるので、では、その日ロ関係はどうなるのかを考えてみたいと思います。
最近の日ロ関係については、かなりよくなってきているといったことは間違いないのですが、その背景に何があったかというと、日ロ双方が歩み寄った。どういうことかというと、ロシア側からすると、日本だけでなくて中国、アジア全体をかなり意識するようになった。その要因の一つとしてあげられるのは、NATOの東方拡大がある。NATOの東方拡大というのは、ロシアでも大きな衝撃を受けておりまして、それまでのコズイレフ元外務大臣が進めていた欧米協調外交を改める必要があるのではないかという議論がロシア国内で盛り上がって、それとともにアジアに対するエリツィン氏の注目度が高まった。
それで、日本側からすると、領土問題を解決するにはどうしなければいけないかということばかりでなく、ロシア抜きでは政治、安全保障問題といった点は何も議論できないような状態になっています。