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共産党自身が、当時まだ全国組織でかなり力があって、事前の世論調査などでは共産党のジュガーノフが当選するだろうと、初期はそう言われていたのですが、先ほどのエリツィン再選を支持した経済グループの7人とか、アメリカからも選挙参謀がやってきて大々的なバックアップを行った。それでようやくエリツィンは何とか再選にこぎつけたといったような状態でした。ただ、今回の選挙については、政権内部でもかなり意見が分かれていて、エリツィンが出馬するといっても、それは一枚岩での支持にはならないだろう。今回エリツィンが出るといっても、かなりの反対意見が政権内部で出るでしょうし、そのほかにエリツィンに替わり得る人物が出始めている。それがレジュメで大統領候補になり得る人物として挙げた人間です。

ルシコフ・モスクワ市長というのは、この前来日しましたので皆さんも御存知だと思いますが、このルシコフさんというのはテクノクラートでありまして、モスクワ市では圧倒的な人気です。確かに、モスクワというのは、ソ連が崩壊してから行かれた方は御存知だと思いますが、クレムリンの前に地下の大ショッピングセンターができたり、どんどん大きな商業施設を誘致して、町がどんどん開発されている。そういった点でかなり評価の高い人物で、それで全国的にも知名度が高い。ただ、モスクワ市長ですので、逆に地方からの反発はあるといった点が欠点ですが、実力、人気から、かなり大統領の座を狙える人物であることは間違いないと思います。

次の、ジュガーノフ共産党委員長ですが、この方自身は当然共産党出身です。国際部とか、割と事務方のところにいた人でありまして、それでこのジュガーノフさん自身は、私も何度も会ったことがありますが、極めてまともな人であります。あまりガチガチの赤といったような感じの人物ではありません。ただ、カリスマ性に欠けて、国民の間の人気もあまりない。この前の下院の弾劾審議等もエリツィンの言うがままになったというような印象がかなり強まっているので、今のところ大統領選で勝つのははかなり難しいでしょう。

レベジ・クラスノヤルスク地方知事、この人はチェチェン紛争のときに脚光を浴びた人物でありまして、前回の大統領選挙にも出馬して、第1回投票が終わった時点でエリツィン政権に入閣しました。チェチェン紛争の終結を実現した人物です。ただ、チェチェン紛争が終結した時点は本当にヒーローといったような形でかなり人気が高くて、国民の支持もあったのですが、クラスノヤルスク地方知事になってからは幾つかの汚職疑惑が挙げられたり、このクラスノヤルスクというのは有力な都市ではあるのですが、中央からかなり離れていて、国民の印象は薄れているため、大統領ポストを狙うレースからは後退しているといった状態です。

 

 

 

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