この背景にあるのは、やはり、IMFとの協調というのを重視する路線と、それとけんか両成敗といいますが、もともとこのジューコフ氏を入れないかわりにアクショネンコ氏の影響力も一定の線で落とすといったような意味合いがあるのではないかと考えています。
この前の大統領弾劾審議に話を戻します。このレジュメに記載していますのは、現有勢力、括弧内は議席数です。若干空席がありますので450人にはなりませんが、大体こういったような勢力配分です。それで、旧ソ連復活などを主張する保守派についてはこの3会派、野党ながらも改革派の路線を主張するヤブロコ、それから政権与党といわれています政権寄りの立場をとる「われらの家ロシア」、あと中間派、極右、それぞれこういった議席配分です。この前の弾劾審議は全部で5つ項目があったのですが、その中で、最も通るのではないかといわれていたチェチェン紛争に関する大統領の責任、この点について議席の3分の2の300を上回る票数が必要だったのですが、283であと17票足らなくて否決されてしまった。あとは200台には乗っているのですが、300には全然及ばない。首相の承認についても、キリエンコが辞めさせられてプリマコフになるまでは何回かの審議が必要だったのですが、今回、ステパーシンについては1回目で承認された。これは、大統領の権限の強さに対して下院がいかに力がないかということを端的に見せつけた結果だと思います。
なぜ、下院が今回これだけ力がなかったか。大統領の言いなりになってしまったかという点については、今年末に選挙がありますけれども、議員心理として選挙はできるだけ回避したいというのは当然あるのでしょうが、そのほかに、エリツィンという人物は、危機に立ったら何をするかわからないという恐怖心。例えば、93年のときに旧最高会議を武力で制圧したときも、まさかそこまではやらないだろうというところまでエリツィンはやった。ですから、先が読めない。超法規的措置をとる、また、議会を解散するのではないかといったような恐怖心をあおって、議員もそれに対してなすすべがなかったといったことのようです。
下院選挙は今年末、大統領選挙は来年の中旬にありますが、それを控えて常にロシアは権力闘争、権力闘争とマスコミでも踊っていますし、私などもそういった記事ばかり書いていたのですが、権力闘争がさらに活発化するのは間違いないだろう。それで、ロシアでは政争の秋という言葉がありますが、夏の間は特に問題はない。しかし、秋になって、長い冬を控えるにあたって、自分たちの今後の生活をどうしていくかというようなことで、国民に危機意識が高まっていって、それに乗せられて議員などもさまざまな行動を起こす。