増えてきたというのは一体どういうことなのか。その人数は一体何なのか。それにおいてどういう問題を持ってそういうホームレスが出てきているのか。それは予測としては増えるのか、減るのか。そこら辺を含めて、それを警告とするのか。どう数値を読み、どう警告するのか。それをどういう形で対応していくのか。それに国家がかかわるのか、かかわらないのか。どこなら解決できるのか。ノン・プロフィットなのかあるいは別のところなのか。さまざまな社会の問題があるわけで、それに対して、その指標を読みつつ、警告を発しつつ、それを一体どこで解決していくのか、タックスペイヤー(納税者)のお金で解決するのか、そうじやなかったらどうするのか、そういうことを研究している。いろいろな意味でそういう警告の網目を張りながらネットワークして、かつ本当に市民は何を望んでいるのかということを拾い上げつつ、それを社会の政策にどうつなげていったらいいのか、そういうメカニズムをつくり上げてきているわけです。それが先ほどの産業の持っている意識なわけです。
●ノンプロフィットの役割
一体、社会の問題をどうとらえるのか。それに対してどういう手当て、ソリューション(解決方法)を考えるのか。そのソリューションに行く道筋をどうしていくのか。それをノン・プロフィットが考えていって、そこにお金がたくさんかけられている。たくさんといっても、もちろんそうたくさんあるわけではなくて、本当のことを言うと、私なんかは研究者の立場としてみれば、お金を見つけることがものすごく大変です。ファンドレイジング(fund raising)をして財団からお金を提供してもらうことに費やすエネルギーの大きさは大変で、ノン・プロフィットのシンクタンクをやっていくには大きな苦しみがあり、現実は厳しい。しかし、実際に大きな流れの中では、財団が支えて、そういうところにお金を投資してきているわけです。そこにアメリカの民主主義の強さがあると私は思っています。
一方、そういうふうな意識に至るにはいろいろな意味でアメリカの社会の特殊性というか、アメリカ社会だからこそできたということも言えると思うのです。では日本にはそれは持ってこられないのだろうか、持ってこなくていいのだろうかということが私の考えの出発点であるわけです。アメリカ社会では、なぜそういうことをノン・プロフィットの人たちがやってきているのか。どうして政府だけに任せておかなかったのか。