市民が使える道具、これは情報公開法とかNPO法とかが含まれるわけですが、自分たちが何か活動をしようと思ったとき、行動しようと思ったときに、どういった社会的なリソースがあるのかといったことを考えてみますと、まだまだ日本の場合には不整備ですから、そこからまず考えていく必要もあると言えると思います。
ですから、現実的なグラスルーツでの活動もそうですが、それ以外の社会的な装置を拡充させていくことも重要だと思います。
D よく分かりました。
E 国際研究奨学財団のEです。非常に刺激的で、分かり易いお話をどうもありがとうございました。もう少し私の頭の中でイメージを膨らまさせたいのでご質問させていただくのですが、この条約の批准に向けて日本のグループは日本政府に対してどのような活動を行ったか、いくつか具体的な例をお話しいただければと思うんです。そのときに、日本のグループが日本政府、もしくは議員さんでもいいんですが、行った活動の中で、うまくいったものと、それとうまくいかなかったものの事例を1つずつぐらい挙げてお話しいただけないでしょうか。
目加田 まず簡単に日本の地雷政策に触れたいと思います。日本は橋本政権のときに地雷全面禁止を支持するという発言はしていたわけですが、英語でいうエベンチュアルということで、「まあ最終的にはそうだけれども今すぐではない」というのが基本的な姿勢だったわけです。
ところが、97年の9月内閣改造によって、現総理大臣の小渕さんが外務大臣に就任しまして、日本の地雷政策は矛盾しているということを指摘されたわけです。その結果、日本政府もそれまではオタワ・プロセスには参加しないという姿勢だったわけですが、最終的に小渕さん自らオタワに出向いて、12月に署名しました。
これはトランスナショナル・ソサエティーの1つの特徴といいますか、分析するうえでよく議論されることなんですが、歴史的な偶然性ということがよく指摘されます。地雷の場合でしたら例えば、先ほど申し上げましたようにダイアナ妃が事故死されたということで、日本では報道が非常に活発になった。それは私たちにとって非常に追い風となりました。
世論が関心をもってくれる、そしてマスコミがそれを取り上げてくれるということは当然ですが、政府に対しての圧力にもなり得るし、我々が活動する際の武器にもなるわけですから、そういった歴史的な偶然性というのは見逃せないものです。