日本財団 図書館


それに対して日本の市民社会というものも、今後成熟が期待されるというご発言があったと思います。

今、日本もシビル・ソサエティーというものが徐々に成熟過程に入りつつあると思います。今年の3月には日本NPO学会というのがありましたし、その前の年にはボランティア学会等いろいろできているのです。それを発達過程の1つとみることもできますが、同じ影響というよりも、主張を大事にすることによってある程度のグループが点在しているような現象が出ているとも見受けられるんです。先ほど、ICBLの成功の秘訣について、「地雷の全面禁止という1つの点だけ同調できればいい。みんな中に入れるよ」ということでキャンペーンを張ったことが非常に成功したというお話だったんですが、そういう観点から今、例えば日本のシビル・ソサイエティーのなかはそういったグルーピングができていると捉えたときに、日本のシビル・ソサイエティーが今後成熟していくためには何が必要か、ということをお考えになるか、ぜひ教えていただきたいと思います。

目加田 そうですね、成熟するために何が必要かということにはちょっとお答えできないんですが、日本のNGOですとか特にグラスルーツのNGOや活動する人たちと話をしていて一番感じるのは、目的が明確でないということです。例えば、平和のために貢献したいので何か運動をしたいとおっしゃるんですが、では平和とは何ですかとお聞きしますと、明確な答えが返ってこない場合がとても多いんです。

先ほど申し上げたように、ICBLの場合には対人地雷という限定された兵器を廃絶するという極めて明確なゴールがあったわけで、ですからその目的のためには手段というのは問わなかったのです。問わないというのは、どういう方法でも、誰がやってもいいということであったわけです。

ところが、日本の多くの場合に見受けられるのは、その目的が明確ではない。漠然と、例えば核にしてもそうですが、核を廃絶したいということで、廃絶するためにそれではどういう手法があるのかといったことにはなかなか踏み込んでいない。もしくは廃絶するというのも概念的であって、運動論的ではないといったことが挙げられると思います。

ただ、そうした目標を明確にして活動していけば、市民社会全体の成熟につながるかというと、もちろんそう単純ではないと思いますし、よく言われる社会的な装置ですね。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION