それは政治家と政府両方ですが、それに働きかけて何とかしようとしている。たとえば、ベトナム・ベテランズ・オブ・アメリカ財団の創設者であるボビー・ミューラーという人は、マス・ムーブメント、つまりマスを動員して運動を行うということを全く信用していない方で、政治家にロビーすることが重要であるというふうな考え方の持ち主ですので、アメリカ国内において運動を広めようという努力は、あまりしてこなかったということが1点挙げられると思います。
もう1点は、ご承知のとおりアメリカは非常に外交問題に対して国民の関心が低いということがありまして、地雷の問題もそうですが、アメリカの一般の世論が盛り上がったということは全くないわけです。これは例えば欧州諸国をみていますと、非常に対照的なんですが、例えばイギリスでは事故で亡くなられたダイアナさんが非常に活発に地雷の問題で活動してきたということもありまして、新聞でもしばしば一面を飾るようなかたちで地雷という問題が取り上げられたこともあるわけです。
フランスでもそうですね。ハンディキャップ・インターナショナルという団体が極めて積極的に地雷に取り組んだ結果、当時のミッテラン大統領を動かして、地雷の条約に関する再検討会議を開始させるということになったのも、立役者になったのはNGOですし、そういった意味では非常に力を発揮して、そして世論を動かしたわけです。
ところが、アメリカでは、少なくも地雷のケースに関して言えば、そのようなかたちで世論を動かすには至っていないという現実が挙げられると思います。どうして米国以外の国々の政府を動かせて、アメリカ政府を直接動かせないのかについては、簡単な答えがある問題ではないと思うんです。しかし、運動方針の問題ですとか、それから今のアメリカでよく言われることは、クリントン大統領の問題とかがありまして、ペンタゴンに対して地雷でさえもなかなか発言権がないというようなことが指摘されています。
確かに核に応用するとなると、世論を動かしていかない限り、アメリカ政府が何らかのかたちで別の決断をするということはあり得ないわけですから、地雷のケースが核の問題にどのように応用できるかというのは、アメリカの国内のケースにおいても非常に重要な点だと思うんです。現在どういうふうにアメリカの世論を盛り上げていくことができるのかというのが、ちょっと明確な答えが見つかりません。
D 目加田さんが最後に日本の市民社会のことについても言及してくださいまして、トランスナショナル・シビルソサエティーを成熟させていくためには、各国のシビル・ソサエティーの実績の積み重ねが重要だとおっしゃいました。