そして、各国で待機しているNGO、例えば東京ですとか、ドイツなどの欧州諸国、南米コロンビアですとかメキシコといった国々のNGOに対して、アメリカ大使館に赴いてデモをするなり、マスメディアに対してプレス・リリースを流すなり、いずれにしましても、その日に同時に世界で活動を盛り上げようと呼びかけました。これはしょっちゅう行っているわけですが、ICBLは世界同時多発化を積極的にやってきたわけです。
この点にも関連しますが、4つ目の特徴として挙げられるのは、ICBLはキャンペーンそのものの運営に対して非常にプラグマチック(現実的)、かつ非常に巧みであったという点が指摘されると思います。極めて戦略的といいますか、戦術的といいますか、自分たちが行う活動がどのような影響力をもち得るのか、自分たちの目的に対してどういった行動を取らなければいけないのかといった点に対して、極めて現実的な視点をもっていたと言えます。
これは例えば核の軍縮運動をみても、全く異なる点であります。オタワ・プロセスが成功したことによって、これはのちほどまた触れますが、このオタワ・プロセスをその他の問題に応用できないかという期待が膨らんできたわけです。しかし、核軍縮の推進論者と話をしておりますと、「まあ、そんなことはあり得ない」、「核と地雷とは根本的に違う兵器なのである」と。それはそのとおりですが、核軍縮に携わるNGOおよび市民社会は、自分たちの活動を連動させる、そして目的のために自分たちの力を結集させるといった点が欠落しておりまして、自分たちがやりたいようにやっているという側面があると思います。そこは、ICBLというのは全く異なっておりまして、自分たちの目的に対してどういった行動を取らなければいけないかについて明確な戦術を組み立てることができる、極めて現実的な視点をもっていたと言えます。
それがキャンペーンの運営方針に非常に強く現れているわけです。ICBLといいましても、各国の個別のキャンペーンの集まりです。たとえば地雷廃絶日本キャンペーン、コリアン・キャンペーン、フィリピン・キャンペーン、ジャーマン・キャンペーンというものは、あくまでも各国の市民社会のイニシアチブとして始まったものです。そして、こうした団体もしくはネットワークがICBLという傘下に入っていくわけです。当然ながら、各国キャンペーンの間でICBLにおける力量に差があります。経験の長いキャンペーンと、そうでないキャンペーンの差です。そこで、そうした差を埋めて、ICBL全体を底上げする運営方針がとられました。