そういう意味で1つの例として申し上げますと、三和銀行は早期退職制度というのを発動しまして、5割ぐらい退職金が通常より多いような制度を発表したのです。そうしたら本当に幾日も経たないうちに予想を超えて大変な数の応募者が出てきている。逆に人事部サイドのほうでその収拾にちょっと困っているというのが実態です。これはどう考えるか。中堅層以下の人々のなかに意識改革が進んできたというふうに評価するのか、あるいは、もう日本の金融界に対する絶望感でともかく離れて、もう1回じっくり考えてみようというようなことなのか、そこはよく分かりませんが、そういう現象が起こっている。これが1つです。
それから2つ目。小原さんから1年半ぐらいのうちにということでお話があったので、私も8割近くまでそれに同感なんですが、その前に、今大きな問題として私が懸念しておりますのは、日本の景気自体が今年の夏場以降どうなるかという問題ですね。Sさんなんかと話をすると、ある程度は意図的な面もあろうと思いますが、今年はポジティブな成長になる可能性は8割だというように最近は一生懸命言っているわけですね。ですが、実際にそんな状態かというと、私は結論から言えばそんな状態ではないと思います。秋口以降において景気がまた悪化する可能性というのは、かなり高い確率があるのではないかと思っています。
そうすると、今の株価のリバウンドしている主要な要因というのは、外資系、機関投資家等というのが大きいわけですね。ですから、今度こそ日本経済も3年目もマイナスではなくて、ポジティブな方向にいくだろうという期待感が、株の上昇につながっているというように考えると、この夏場以降において再び日本経済が下向きのような状態に入っていくというようなことになれば、そこでもまた売りが起こりまして、現状のように資産デフレの問題というのが絡んでくると、秋口に入ってそういう売りがきっかけになって、日本の金融機関のみならず、私は日本自体が世界の同時不況の引き金に再びなる可能性が非常に強まってくるのではないかと懸念しています。
そこで、また株も相当大幅な下落が生じてくるという事態が想定されるのではないかなと思います。この点をどうみられるかですね。仮にそこを見事に乗り越えても、銀行自身の意識変化というものがないと、おっしゃったとおり、1年半か2年以内にもう一度そういう問題が生ずる可能性に関しては私も同感ですね。