しかし、ご承知のとおりモルガンは三菱の資本も入っていましたからね。ですから、三菱とはいろんな意味で、親類付き合いがありました。しかし、21世紀を目指す銀行経営、日本の銀行のなかで一番変化をもたらしてくれるのは住友、三和、これはロンドンでそういうアンダーライティング業務なんかをみていましてもよく分かりましたし、リスクをとってでも仕事をやっていこうということと、ただリスク管理が十分だったかどうかという点については、問題はあったと思います。
それから、大学の同期生をみていても、銀行に入る人っていうのは大体ノーリスク、ハイリターンですね。(笑) まあ、公務員よりはリターンが高いという、そういう傾向の人が多いし、それから寄らば大樹の陰的な傾向が一般的ですよ。例外はいろいろありますが。結局当時の我々の同級生が今そういう幹部になっているわけですけれど、そういう意味で自分で経営していこうとか、リスクをとってやっていこうという点は比較的少ない傾向はありました。もちろん、それは銀行の中で鍛えられて、変わっていった人たちもありますけれど。
それから株価については、私は日興証券時代にも、モルガン、メリルリンチ時代にも、株というのは全然取り扱ったことがないし、自分で株を買ったことは一度もなくて、売ったことは1回だけあります。メリルリンチの株をもらって退職するときに売りました。(笑) ですから、株のことはほとんど分からないのですが、遠くからみていて知っているんじゃないかと思われて聞かれて、時には答えなければいけない。毎週書いている私の連載のなかで、3月末に1万3,800円、これが日本の株価の底値だと、私にしては大胆に言ったつもりですが、それから2割上がってほっとしています。
ですから、所得倍増内閣という時代がありましたが、今私は株価倍増内閣というキャッチフレーズが適切かどうか分かりませんけれど、株価が倍増したら日本の問題はほとんどみんな解決してしまうんですね。やれ公的資金だなんだということも必要ないぐらいに。少なくとも一時的には。今日本の銀行経営で一番問題なのは、日本はお金が死んでいる国であるという点だと思っています。金が死んでいる。要するに1年間働いたら給料をもらえる。日本では1%の給料、アメリカでは6%の給料、アメリカヘ行って2カ月働いたら1年間分の給料がもらえて、残りの10ヵ月は休暇がもらえる。