あと2つ質問させていただきたいのですが、やはり銀行の経営者というのは経営者ではないと思うんですね。韓国政府の高官が私の上司に言っていたことですが、韓国の銀行にはCEOはいない。だから問題を引き受けて、その問題を解決しようと考えている人は一人もいない。みんな役人で、自分の任期さえなんとかすればそれで済む。だから2、3年嘘をついて、帳簿をごまかしていればいいんだというのが本音だ。でも、もうだめだ。韓国は大統領制でかつオーナーがいて、そのオーナーがいるから、これはだめだと思うと、オーナーがやってきて何かやる。何かやるから失敗することもあるけれども、成功すればどんどん成功する。
日本はオーナーがいない。何もいないから、失敗もしないけれど、成功もしないからいつまで経ってもだめだろうというのが韓国の政府高官の日本診断でした。これについてどうお考えかというご意見をお聞きしたい。
3番目は、銀行に危機感がないというのは、やはり新規参入がそう起こらないだろうということだろうと思うんですね。別に新規参入が起こらなければ、何とかやっていけるんじゃないかと考えている。それで銀行というのは通帳を渡せばキャッシュフローがあるわけで、究極のところ日銭商売ですよね。だからパチンコ屋だって、パチンコ玉を渡して景品を渡さなければ日銭が入ってこないわけですけれど、日本政府ないしは日銀が銀行を守ると言っている限り、郵貯と同じで通帳を渡せばいくらでもキャッシュが入ってくる商売ですから、危機感がないのは当たり前なわけです。ですから、2001年にペイオフしないということは、銀行が絶対に危機感をもち得ないし、その株主だって、別に新規参入がなくてペイオフがなければ、その株を持っていても別に損はしないだろうと思う。
そこをマーケットがむしろペイオフの延期を予測しているんじゃないかというように考えると、マーケットは合理的だという考え方と全部矛盾なく説明できるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
小原 最初のご質問は、市場の評価は矛盾しているということですか。今おっしゃった3つのことは、多かれ少なかれ私もアグリー(agree)というか、全部まとめておっしゃっていただいて、私もすっきりした感じです。特に第1番目の市場が今上がっているということは、マーケットの参加者がここぞとばかりこのチャンスを見逃してはいけないといって買っているという人が大方なんですね。