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これは銀行セクター全体に関して言えることですから、恐らくリスク資本市場などを発展させなければいけないのと全く同じで、要するに日本の銀行がやはり少しずつ資本市場に対して目を向けていって、そこからも収益を上げなければいけない。株価も上げなければいけないということは、少しマーケットとは何かということを理解しなければ、そういう方向には進んでいかないと思います。そして、その資本市場の発展ということに関してはカルチャーもありますが、当局の動きということも必要ですし、あとは自然のニーズなのだと思います。

例えば、銀行が本当に金融再生委員会のアドバイスを無視して、どんどん資金を引いていくというようなことがあれば、どっちにしろ資本市場ができて、そこが成長しなければいけない。それをみて当局がそれを「じゃあ育成しよう」とするという自然の流れが本来あるべきだけれども、今はなんとなく全部その自然の流れを怖い怖いといって断ち切っている。そして日本の利益を損ねているという感じがするのですが、やはり誰かが決断しなければいけない。みんなが決断しなければいけないことだと思います。

A ちょっと一言だけなんですが、戦後ずっと高度成長してきて雇用も出てきましたね。ですから、労働政策もその自然の流れを支える役割を果たすということで完結していたのです。それをいいことにして、今度は今おっしゃったことと全く同感なんですが、経営のトップの人たちの思考が停止しているのです。次を考えていない。

じゃあ小原さんがおっしゃるように変えていくというのは全く正論なのですが、私が1つポイントとして申し上げておきたいのは、金融を変えるためには失業が怖くないと思えるような労働市場インフラを今からつくっておかないと、その両輪がないと金融も変わらないだろうということです。その怠けている、思考停止している人たちにかえって弁解の余地を与えてしまうんですよね。本当におっぽり出してやれるのかというと、それはやれませんよ、今の市場では。

ですから、失業が怖くないという社会をすぐにもつくらなければいけませんね。そうすると、金融のほうは堂々とどんどん削れるのだと思うんですね。それだけちょっと、お願いしますからやってください。

小原 巨大な組織であることと、今おっしゃったように社会的インフラが整っていないということで、やはり時間がかかるわけですが、心配なのは株価と、それからいろいろと新規参入者がいるということと、いったん始まると例えば資金の流出とかが止まらなくなるということです。最近は銀行についてあまり厳しいことばかり言うのは控えていますが。

 

 

 

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