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私が言いたかったのは、世界銀行にはそういった専門の方たちが多いわけです。ですから、これまではマクロ的な問題で対処できたのかもしれませんが、今回の危機というのはそういうふうにたくさんの資本が移動するようになって、金融部門、そういうミクロ部分が非常に重要になってきて、今のIMFだけの指示では限界があります。そうしますとそこに世界銀行なども一緒に入って、通常スタンドバイといわれるこの3カ国に適用された融資制度では、比較的豊かな国に融資をするので、この部門では歴史的にほとんど世界銀行とは協調して仕事をしていません。どちらかというと貧困所得国を対象としているESAF融資制度では、共同でプログラムを作っているのですけれど、スタンドバイの場合はほとんどそれが行われていなかったのです。それをこれからは世界銀行とともに政策をつくっていく必要がある。そういうときにどうしても機関が2つに分かれていますと、私の経験でもそうですが、なかなかコミュニケーションがうまくいきません。それで十分なコミュニケーションが無いなかで政策がつくられているということもありますので、そういう意味で再編成をする必要があるということを申し上げたかったのです。

司会者 Dさんどうぞ。

D 要するに今の最後の点に関係している話なのですが、あの先ほど来持続可能な外貨準備があるというお話をされましたが、それをIMFだけでそういう最終目標を達成できるようなプログラムを作るというのは不可能だと思うのです。そこで実物セクターがありましたけれども、やはりサスティナブルなレベルに一国の経済をもっていくためには実物セクターが非常に大事で、それで多分IMFや世銀の考え方だと、それは市場メカニズムにかなり任せればちゃんと産業なり何なりサスティナブルなレベルに動くという前提でやっているのだと思うんです。だけど発展途上国のようにリスクテイカーがいないとか、あるいは情報が不完全だとか、条件の揃っていないところでやはり実物部門のミクロな政策まで入るということでなければ、最終的な目標のところは達成できない。だから、いかに構造改革というか、中の組織改革をしても、あるいは世銀との連携を深めて1つの組織にしても、それでもまだ十分にできないというのが限界だと思うんですね。

ですから例えばある段階までは調査機能、それから政策提言機能というのはたくさんあるわけですし、特に短期の政策というか、短期の援助というのはいいと思うのですが、ある段階以上のことというのはむしろ人貸業になったほうが私はその国のオーナシップが感じられて、いい政策というかサスティナブルな一国の構造改革なり、そのあとのもろもろのターゲットが達成できるのではないかと思います。

 

 

 

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