例えば流動危機だというのは、韓国の造船なんかが一時的に外貨が全然とれなくて、借りられないという話があったけれども、結局何もなく無事に借りられて輸出ができるようになった。多分その過程でどこかのインベストメント・バンクがその危機に乗じてさかんに儲けたのではないかと思うのですけれども。
それから3番目に、世界銀行やなんかと重複するから混乱するというわけですが、私はむしろいいことじゃないかと思うのですね。つまり、違う人が違うアドバイスをすれば、途上国の政府は、じゃあ本当は一体何が正しいのだろうかと考えることができます。つまりこの団体の目的もそうだと思うのです。政治家に今まで霞ヶ関の役人が1つだけ案をもっていって、もうこれでなければいけないですよというからいけないので、幾つもの選択肢を用意してもっていけば、政治家が、…。
A もっと分からなくなる。(笑)
C 素人の政治判断がどれだけ正しいか分かりませんが、そういう見方もできる。それから人材面で、金融自由化したら金利が上がったとおっしゃいましたね。普通は金融自由化すれば、開発途上国は資本が不足だから、資本が入ってきて下がるはずですけれども、それが上がったというのは、金持ちがよそに貯金をしたということですよ。ということは、途上国で足りないのは資本ではなくて、債務契約の履行がちゃんといくのだろうかだとか、そういう法のうえの問題とか所有権の問題とか、治安とか、まさに政治的な問題で金利が高くなっていくということを示す素晴らしい例じゃないかと思います。
司会者 それについて何かありますか。
白井 世界銀行との考え方が違うというのは1例だったのですが、どういうことかといいますと、やはり今回の危機というのは銀行部門の構造部門が大きな危機の要因となっておりますし、プログラム段階でもそれが非常に重要な要素を占めているわけですね。ですけれどもIMFでは、やはりそういう専門家は非常に少ないわけです。
当初IMFが3カ国にプログラムを提示したときに、世界銀行とは協調体制をとってプログラムを作ったわけではないのです。ですから、あまり専門性が無いなかで急いでプログラムが作られたわけです。最近になって98年の後半から世界銀行がこういった金融部門の構造改革に対して支援するようになって、今協調して政策を採っていますけれども、やはりそこにもう少し金融部門の構造部門に対する専門性があったら、また違った提言ができたと思います。