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これには、ミッションの期間とか、交渉の方法に問題があると思います。そこでこれからは、今回のアジア危機もそうでしたが、やはりもっとプログラムの理解を促進するような方向にもっていかなければならない。そうしないといつまで経っても、世界の皆さんがIMFのプログラムがよく分からないということで、こういう危機があったりすると、政策当局者とIMFとの間で行き違いなどが起こってしまいますので、これは本当にこれから真剣に考えていかなければならないことです。

それから5つ目は構造改革の順序付けということで、やはりほかの人も言っておられますけれども、私自身も非常に感じたところです。特に銀行部門のある構造改革、例えば銀行を国営化するといいます。それに対する手順というのは、まず聞き取り調査もきちんとしまして、それをプログラムのなかにリーズナブルな期間で、ある地域にはこういう法令を出してとかいうふうに決まっているのですが、やはり構造改革間同士の相互関係というものに対する認識が薄いと思うのです。やはり時間の無い中でプログラムを作ってしまいますので、どうしても構造改革間での相互関係、あとでアジアのほうで言いますが、十分に認識しないで入れてしまっているというのは、私自身が実際にその国のプログラムに携わっていて非常に強く感じたことです。それでやはり98年に外部依託した報告書でも、例えば、ジンバブエとザンビアのケースですが、国内金融市場を自由化しました。それはいいのですけれども、自由化するとそういう国は通常金利が高まってしまいます。そうしますと金利が高くなることによって一時的にその国の経済成長率が低下したり、所得分配に不平等が生じたりします。そういうことに対して、十分な理解がないままに国内金融市場の自由化という構造改革を入れてしまっていたと批判しています。

次に、IMF体制の修正・改革というのはひとまとめにしますと、要するに国際金融システムの安定化に向けての環境づくりをしていかなければならないということです。それには、IMFがもっと情報の偏在を低減していくような体制づくりをしていかなければならないということと、モニター機能の強化をする必要があります。それから危機に対する迅速で適切な対応をしなければならないと思います。今回の危機で感じたことなのですが、例えばインドネシアとかタイで突然危機が起こり、それに対してIMFは新しい融資制度を作りまして、比較的短期間に多額の資金を融資することができるようになりました。

 

 

 

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