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そして、4つ目ですが、所有意識の向上ということです。これは98年にIMFが外部の学者たちに委託したIMFのプログラムをレビューした報告書がありますが、そこでも指摘しております。あと私自身も常に思っていたのですが、融資受入国の所有意識が欠如していることが多いのです。今回のアジア危機がやはりどうしてあれだけ深刻化したかというと、1つの理由はやはりインドネシアがIMFの融資を受けましたが、十分に納得しないで合意しているわけです。そうしますと、IMFの融資を受けるようになってプログラムを採用することになったけれども、結果としては、IMFと約束したどおりの政策をしていないわけです。そういうことが実際に起こっているわけです。つまり、受け入れる側もお金を早くほしいから、よく理解しないでサインしてしまうということがよくあります。

これは私自分の経験で思ったのですが、実は政策当局者がプログラムの内容を十分によく分かっていないことがあるのです。もちろん、国によりますが。IMFのアプローチをよく分かっていないということを感じることがあります。発展途上国に行きますと、実際にIMFのアプローチを理解しているのは、いわゆるマクロエコノミストの多い中央銀行職員が多いのです。しかし、IMFのアプローチで本当に重要なのは財政担当者です。先ほどから言っておりますように、財政赤字を削減する必要があるわけです。ですから重要なのは大蔵省職員ですが、彼らの中でプログラムをよく理解していない人が結構います。

かりにそうした状況があったとしても、IMFミッションのほうも時間が限られていることから、それを十分説明する時間がないことが多いのです。また対象国側も、十分に理解していないのにサインしてしまうことがあります。ですから、私みたいに比較的若いエコノミストと個人的に話をしますと、私に聞いてくることがあるのです。例えば、「このプログラムのパフォーマンス・クライテリアは調整できるというけれども、どうやって調整するのか」などというように。そうした説明は実はちゃんと書面にして渡しているのですが、かならずしも理解できないことが多いのです。そんなことが現実に起こっているわけです。ということで、受け入れている本人たちが分かっていない。分かっていないで、パフォーマンス・クライテリアさえ満たしていればいいという意識をもっているものですから、どうしても所有意識が欠如しています。

 

 

 

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