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第2番目ですが、先ほどからパフォーマンス・クライテリアが大変重要だというふうに申し上げました。そのパフォーマンス・クライテリアはちょっとここでは説明しきれないのですが、ある程度の調整は可能です。現在のプログラム作成方法では、かなりリジッドで、フレキシブルではないのです。例えば、ある国が固定相場制をとっており、非常に多額の国際資本流入があるとします。そうしますとその結果、固定相場制という為替政策と、マクロ経済政策との間に不整合が起こってきてしまうことがあります。この場合、政府は、そういった状況に直面することを考えて、非常に柔軟なマクロ経済政策を要請されているわけです。ですから、今の時代というのは、政府が常に柔軟な経済政策を採っていかなければならないのですが、それに合わせてパフォーマンス・クライテリアももっと柔軟なものにしなければいけないと思います。常に固定相場制から変動相場制に、あるいはその逆にという可能性を見込んだうえで、パフォーマンス・クライテリアを設定する必要があるということを私は強調したいのです。

その具体的な提案というのは本書のほうで述べていますので、ここではプログラムにより柔軟性を与える必要性を強調しておきたいと思います。それから、今回のアジア危機で重要になってきたのは、外貨準備だけをみていたのではだめなわけです。外貨準備と短期対外債務や、その相互関係というのが非常に重要なわけですから、たとえ外貨準備が増加していても短期債務がもっと増加していれば、それは投資家の期待が突然変化してしまえば、当然にしてその短期対外債務に対する外貨の支払いに十分な外貨準備がないわけですから、これはもう当然危機が発生したら深刻化するだろうなという予測がつきます。そういった視点が、アジア危機が発生するまではそれほどなかったわけです。そうしたことを今、パフォーマンス・クライテリアで強調しておく必要があると思います。

3番目の修正点ということですが、先ほどから申し上げているようにプログラムの本当の目的は最終目標です。実際にはプログラムの操作をしているパフォーマンス・クライテリアなどの政策変数というのは中間目標であるわけです。例えば、中央銀行による政府部門に対する国際信用貸出や税収といったものが、中間目標になっているわけです。しかし、中間目標は、結局は最終目標を達成するための中間目標であるにすぎないのに、実際にはあたかも中間目標が最終目標であるかのように先行してしまっているわけです。ですから各国の政府も、それから私の感じていることですけれども、IMFの職員のほうもパフォーマンス・クライテリアさえ満たしていれば、プログラムは成功しているという発想をしています。その結果、仮に中間目標が実現したとしても、必ずしもその国が豊かになっている、例えば経済成長率が高くなっているとか、インフレ率が収束しているとか、そういうことに結び付いていないのです。それは先ほど申し上げましたように一連の実証分析がありますが、それらは必ずしもいい結果が出ていません。

 

 

 

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