次にIMFプログラムの修正ですが、まず既存のプログラムのなかで何ができるかということを考えてみます。そうしますと、IMFのファイナンシャル・プログラミングというのは、先ほど説明しましたように4つの部門から成っています。それにリンクした4つのマクロ経済指標がありますが、やはり非常に重要になるセクターというのが貨幣部門です。先ほどご覧になってお分かりのようにエッセンスは第7式の恒等式から決まってくるわけです。マネーサプライの変化が国内信用の変化と、外貨準備の変化に等しいという恒等式です。そこに国際収支表とか、あるいは財政勘定とかがリンクしているわけです。
ですから、まずマネタリーサーベイ自体をもう一度吟味する必要があるのではないかと思います。正直に言いまして、やはりこのマネタリーサーベイをみただけでは、国内銀行の構造的な問題というのは見えてこないわけです。集計しているわけですから、それを見ただけでは当然のことながら危機の深さ、あるいは危機を予告するというのは非常に難しいわけです。ですから、1つはやはり危機の発生の深刻さをIMFが見誤っていたという事実がありますが、その背景にはやはりマネタリーサーベイだけをみて、銀行部門の分析をするということに1つ問題があるわけです。
そこで、どういった修正をしたらいいのかということを一応検討してみます。マネタリーサーベイというのは、基本的には銀行が中央銀行に提出するバランスシートに基づいて集計されているのです。そうしますと、当然そのバランスシート自体に問題があれば、その国の銀行部門の構造的な問題はほとんどみえてこないということで、やはりこれからは、マネタリーサーベイをただ所与として利用するのではなくて、もっと適切な会計基準というのを強調して、グローバルなスタンダードな会計基準というのを作って、それに基づいて分析するというような発想をしていかなければならないわけです。
ですから、プログラム対象国に対してコンディショナリティーがありますけれども、そのコンディショナリティーで、やはり適切なデータを早急に作成するように各国にこれから強く要求していくことが必要になるということです。それとともに、マネタリーサーベイをより詳細に分類することによって、少なくともある程度、ある国の抱えているクレディット・リスクとかリクイディティ・リスクとか為替変動リスクというのを分析できるようなかたちに修正する必要があるということです。