CA = (SP - IP) + (T - G - IG) ……………(5)
SP : 民間部門の貯蓄 (国民所得表)
IP : 民間部門の投資 (同上)
T : 税収 (財政収支表)
G : 政府の経常・投資支出 (同上)
(5)を(1)に代入
ΔR = (SP - IP) + (T - G - IG) + KA ………(6)
そこで、この第5式の経常収支を第1式の国際収支表の恒等式に代入しますと、第6式のようになりまして、外貨準備の変化というのは民間部門の貯蓄超過プラス政府部門の貯蓄超過プラス資本収支に等しいという式になります。
この第6式からご覧になるとお分かりのように、IMFが融資する対象国というのは、国際収支問題に直面している国です。この場合、国際収支問題というのは基本的には外貨が不足している状態ですから、Rというこの外貨準備が非常に重要になってくるわけです。今までIMFから融資を受けた国というのはどういう国かといいますと、外貨準備が非常に少なくなっている状態の国です。その要因は、多くの発展途上国の場合、非常に大規模な財政赤字に陥っているということです。それと民間の貯蓄が非常に少なくなっている状態、これと財政赤字によって対外債務が増えてしまっていて、対外債務に対する元本の支払いが非常に高まり、それによって経常収支が非常に小さくなっているというのが、今までのIMFの融資対象国だったわけです。
従って、早く国際収支問題を解決するためには、外貨準備を蓄積しなければならないわけです。そうしますと、まず操作可能なのはやはり政府です。民間部門の貯蓄を上げるということは比較的難しいので、まずIMFが採る政策というのは、外貨準備が低下している一因である財政赤字を削減することです。ですからIMFのアプローチが均一的であるとか、需要抑制政策であるとかいうふうに単純化していう人が多いですけれども、その背景にあるのは、IMFから融資を受ける国の抱えている問題は非常に類似しているということで、基本的には財政赤字を削減するという政策が出てくるわけです。