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それから、IMFのもう1つの機能は債権者によるバンドワゴン現象を低減するということです。つまり、現実には投資家は特に発展途上・新興市場諸国の情報を十分に入手できない。そうしますと不完全情報が存在しているわけですから、そういったなかである投資家がある国に融資するのを引き上げてしまうという行動をとったとします。そうしますと情報が不完全ななかで、同じようにほかの投資家も引き上げる行動をしてしまうことになる。最終的にはそれが大きな塊となって、突然その資本がある国から流出してしまうというような、バンドワゴン現象が起こります。IMFの役割というのは、こういった状況をある程度改善するために、情報を提供するということも行っているわけです。皆さんに適切な情報を提供するというような役割をもっておりまして、その結果発展途上・新興市場諸国に、民間資金あるいは資金余剰のある国の資金の流入を促すという役割があります。ところが、実際には必ずしもそうした役割を果たしていないのではないかというような批判があります。

最後に、最近では世界銀行とIMF、またはほかの国際機関との業務が重複してきており、あまり違いがなくなってきています。そうしますとどういう問題が起こるかというと、例えば、IMFのアプローチと世銀のアプローチの違いというものが出てきてしまって、不整合な経済政策を提案する可能性が生じます。例えば、世界銀行のほうでは、貿易を促進するために関税を引き下げたほうがいいと提言します。しかしIMFのほうでは関税収入が激減すると税収が減るわけですから、関税は不適切な政策手段であるとは思いながらもやはり関税収入を引き上げるとか維持するということを要求することがあるわけです。このように2つの国際機関が、全く相反するような経済政策を提案してしまうようなことが度々ありまして、そうしますと今回のアジア危機もそうなのですが、混乱が生じてしまいます。それがさらに不確実性を高めて、投資家によるある国に対する信任を低下させてしまうということがあると思うのです。しかも人的、物的、時間的な無駄がかなりあると思います。そういうことで、基本的には国際的機関そのものを再編成しなければならないのではないかという批判があります。

ファイナンシャル・プログラミングというのは何を目的としているのかといいますと、基本的には、簡単にいってしまえば対外均衡と国内均衡を同時に達成することです。対外均衡を達成するというのはどういうことかといいますと、例えばある国の経常収支が赤字であるとします。そうしますと、その経常収支の赤字に見合ったサステイナブルなレベルでの資本流入を維持するということです。ですから、持続可能なレベルでの国際収支を達成するというのが、対外均衡ということです。

 

 

 

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