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そのため、実際にIMF支援プログラムは本当にその国にとってためになっているのだろうかという疑問が起こっています。それからIMF支援プログラムというのは基本的には短期です。長くても3〜4年です。しかし、3年のプログラムといっても、実際にはまず1年目を対象にします。2年目以降は修正していけるので、基本的には1年先を注目しているのです。そうしますと1年間に盛りだくさんにいろいろな政策を入れてしまう傾向がありますので、非常にたくさんの政策をやりすぎてショックアプローチになっているというような批判がよく聞かれます。

それから、IMFの体制自体に対する批判ですが、まず重要なのは、今回の危機などを事前に予測ないし回避することができなかったという点であります。つまり、IMFのエコノミストの能力自体の問題、それから危機が発生してから危機が波及し、さらに深刻化していくのを回避できなかったということで、IMFの体制自体に限界があるのではないかというような議論があります。

IMFの機能というのは、1970年代にブレトンウッズ体制が崩壊してから、国際金融システムの安定化を目指して加盟国の政策のサーベイランスをすること、つまり目標は国際金融システムの安定化であるのですが、どうも現在の経済状況下ではこういうサーベイランス機能が低下しているのではないかというような批判があります。

それから、IMFというのは、基本的には貿易取引、経常収支の取引に関して、通貨の兌換性、取引に制限を認めないということを規定しています。IMF協定の第8条に参加した国は、基本的には経常収支取引の規制を撤廃するということで、そういうことに対して公共財を提供するというのがIMFの目的の1つですが、最近ではご存じのように国際貿易よりも重要なのは国際資本移動です。年間取引額でも何百兆ドルというような規模での国際資本移動が起こっていますので、むしろ経常収支よりも重要なのは資本収支なのです。ところがIMFの協定、法律のなかでは資本収支に関しては触れられていない。IMFの管轄というのは、現段階では貿易収支と短期の貿易信用に限られていまして、それ以外については権限をもっていないということで、IMFの果たす役割が国際金融システムの安定化ということであるなら、もはや限界があるのではないかというような議論がなされています。

 

 

 

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