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それとともに、今回の東アジア危機についてなぜ発生したのかというような、例えば、ファンダメンタルズの問題があったのかどうかというようなことに関して、学識者の間で大きな意見の相違もありました。それから、危機対応策に関しても、IMFと世界銀行でも対応の違いがみられましたし、IMFと政策当局者でも当初の段階ですと、IMFプログラムに対する足並みのズレがかなり顕著にみられました。

そして、資本移動に関して、各国間で資本取引規制を導入するのかしないのかということで、さまざまな意見が出てきました。さらに、現在世界にはさまざまな為替制度が存在していることから、新しい国際経済環境のもとでどのような為替制度が適切なのか、あるいは資本規制を導入するにしてもどのような規制を導入したらよいのか、ということについて非常に活発な議論がされるようになりました。

このようにたくさんの意見が聞かれるようになり、また政策の足並みのズレもありまして、今回の危機というものが今まで以上に、あるいは今までとは全く違った意味で問題を提起しております。それとともに不確実性が非常に高まっている現状で、新しい国際金融体制が必要となってきており、そういうシステムを形成するためにはどうすればよいのかということが、盛んに議論されている非常に重要な時期にあると思います。

ここで、IMFのプログラムとIMFの体制に対していろいろな批判がありますが、簡単にまとめてみました。どういう批判があるかといいますと、まず「プログラムの内容が均一的である」ということです。2番目の批判としましては「厳しすぎる総需要抑制政策」であるということです。それから「国の特殊性や文化を無視している」という批判があります。そして「融資対象国の所有意識の欠如」、加盟国がプログラムを押し付けられていると感じているということですね。さらに、これは特に構造改革について当てはまるとおもいますが、「政策が不適切な順序付けに基づいている」ということです。つまり、構造改革が相互に与える影響などを考慮してプログラムが作成されていないということです。

その他に「プログラムの有効性への疑問」ということで、実際にプログラムを採用した国がたくさんありますが、そういった国々のプログラムが未完了な場合が多く、しかもプログラムを採用した結果、経済成長率、インフレ率、外貨準備といった、プログラムの最終目標が改善しているのかどうかというのを実際にみてみますと、必ずしも有効な結果が出ているとはいえません。その理由を、IMFのほうでも用意しておりますし、もちろん、IMFの体制だけの問題ではないと思いますけれども、必ずしもプログラムを採用した結果いい影響が現れていないということは事実です。

 

 

 

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