日本財団 図書館


ですから、国際資本移動が加速化し、各国が国内金融市場を開放するようになった現代において、50年代に成立したファイナンシャル・プログラミングをそのまま依然として利用していくというのは、限界があると思うのです。そこで、少なくとも現状のプログラムのもとでどのような修正を試みたら、例えば危機の発生に対して予め予測するような能力、あるいは危機を回避するような能力を、少しでもIMF自体が高めることができるのかということについて検討しています。

それから、IMFのファイナンシャル・プログラミング自体をもっと根底から改革する必要があるということで、まだ初期の段階ですが、幾つかの提案をしています。皆さんもご存じだと思いますが、IMFの体制をどのように修正したらよいかというような議論がたくさんなされていますけれども、私自身の経験と考えに基づいて、このような方向で体制を変えていったほうがいいのではないかといったようなことを検討しています。

このように本は3部構成になっておりますが、今日は時間も非常に限られていますので、まずそのイントロダクションとしてIMF支援プログラムの背景などを説明いたしまして、そのあとにこの第2部の第6章、時間があれば、非常にシンプルなモデルに基づいてIMFのファイナンシャル・プログラミング自体はこういうものだということを簡単に説明しまして、それから第8章について説明したいと思います。第8章では3カ国のプログラムの特徴を列挙しまして、最終的にはそのプログラムのどういう点を修正すべきか、それから特に東アジア3カ国のIMFプログラムの問題点などについて、示唆していきたいと思います。

それで東アジアの危機というのは、先ほども申し上げましたように、7月にタイを発端として発生しました。その直後の8月にタイはIMFに融資を要請しまして、IMFから融資を受けることになりました。しかし、IMFのプログラムを採用したにもかかわらず、直ちに危機の収拾には向かわなかった。しかもインドネシアほか各国に波及し、危機はさらに深刻化して、世界に波及していくというような結果になりました。こういうことを背景として、IMFのプログラムとIMFの体制に対して、従来もありましたが、従来にも増して世界の関心が集まるとともに、たくさんの批判が出てきました。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION